検証・三和問題(下)/動かぬ証拠
update 2003/12/14 11:01
函館市は、三和の原状回復作業を支援してきた食品会社「白樺」に廃棄物中間処理業を許可する方針から、行政代執行を含めた新たな道を模索せざるを得なくなった。この背景に、三和の不法投棄から白樺の原状回復作業までを厳しく監視してきた地域住民の目があったことは見逃せない。住民の厳しい監視から次々と明るみになった「動かぬ証拠」により、市は方針転換へ動いたとも言える。
中心となったのは、不法投棄場所の近辺に居住する住民で組織する「東山地域環境対策委員会」(伊藤弘明代表)。同委員会の築田敬子さん(44)は言う。「市には『物事を疑う勘』がなかったのでは。何で頻繁に立ち入り検査に行っておきながら、(白樺の埋め立てが)分からなかったのか」―。
そもそも、三和が不法投棄を続けられた原因は、市が20回以上行ったとする立ち入り検査にもかかわらず、発見できなかったことに起因する。今回の白樺の件にしても、市は白樺が行った三和の開発行為許可区域内での木くず破砕機設置の事実確認が遅れた。
その一方で住民側は、作業が行われた9月上旬、同社が夜間に区域内で何らかの作業を行っていることを確認していたという。
「(原状回復で掘り起こした)がれき類の山が見るからに少なくなっているのが分かって、きっとそれらを埋めたんだと感じていた。白樺は許可を申請する前なのに、そんな機械を設置すること自体がおかしいと思った」(築田さん)。
住民側にとって9月の時点では、措置命令場所以外にも埋まっている木くずやがれき類などを市に認めさせることが最優先だった。11月に措置命令場所外での不法投棄が判明した後、矛先を許可区域内に移して市に試掘を求めた結果、不適正投棄の“証拠”をつかんだ。
今回の一連の問題は、「市には頼れない」という地域住民の危機感が生んだものとも言える。築田さんは「市と市民との距離が遠過ぎ、業者との距離が近過ぎた結果」と分析した上で、「市は白樺を守るために許可を出そうとしていた。白樺の廃棄物処理の発見が許可後だったとしたら…。市にはよく考えてほしい」と力を込める。
市はここ数年来、「市民との協働」をマチづくりのスローガンにかかげ、各種委員会や懇話会に公募した一般市民を交えるなどの取り組みを重ねてきた経緯がある。しかし、今回の事件では、住民の理解を得られないまま白樺への処理業許可に走り、結果としてとん挫したのが実情。「市民のための行政」の本質的な部分が市に問われているのは言うまでもない。
提供 - 函館新聞社
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