未来大実験

update 2003/11/24 22:34

 準天頂衛星システムを用いて列車の安全運行を確保する技術開発に向け、国土交通省は12月2日、公立はこだて未来大学で、擬似衛星を使って車両位置を把握する実験を行う。新技術は、GPS(衛星利用測位システム)を使用する自動車などのカーナビゲーションシステムの「列車版」で、同省は「将来的には列車の信号保安システムに活用し、鉄道事業者の保安管理の省コスト化を図りたい」としている。

 同大システム情報科学部情報アーキテクチャ学科の鈴木恵二助教授が、「擬似衛星」として使用できるGPSの発信・受信機材を持った実験の実績があることから、同大が選ばれた。鈴木助教授は、同機材を使ってロボットが自らの位置を確認する研究を進めている。

 実験は、独立行政法人交通安全環境研究所(東京・三鷹市)と同大が共同で行う。準天頂衛星に見立てた擬似衛星を校舎屋上に取り付け、受信機を積んだ台車(バギー車)を同大構内に走らせて電波を捕捉し、位置を確認する。

 自動車のカーナビゲーションの誤差は「数メートルから十数メートル」とされるが、新技術が開発されると「誤差数十センチにまで精度を高めることが可能」(鈴木助教授)という。

 同研究所によると、列車の信号保安システムは線路を流れる微弱電流を捕らえて信号を変えるなどして列車の運行を制御している。しかし、設置や保守管理に多大のコストがかかり、鉄道事業者の間では省コスト化が大きな課題となっている。

 同省は、今回の実験で精度を確認した後、来年2月上旬、熊本市で路面電車を使い、車両位置の測定、電波ノイズの状況、位置検知の安定性などを調べ、有効性を検証する。

 鈴木助教授は「市民の皆さんの税金で購入した機材を使っての実験で、ぜひ成功させ、実用化させたい」と話している。

 実験には同省、同大、同研究所の職員ら10数人が立ち会う予定。今月25日から機材の調整や設置作業を始め、12月1日に最終調整を行う。(吉良 敦)

提供 - 函館新聞社



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