桔梗保育園の来年度民営化断念
update 2003/11/21 11:07
函館市は、来年度に実施を予定していた桔梗保育園(桔梗3)の民営化を断念した。民営化に反対する保護者から理解を得られなかった市の進め方に原因があった部分は否めないが、一方では厳しい市の財政状況や公・民の格差を考慮し「民営化はやむを得ない」という声も各層から挙がる。今後は、公・民それぞれの特色を活かしての“市全体での保育レベルの底上げ”に向けてどう議論するかが、市、保護者双方にとっての課題となりそうだ。
国、道の補助金と市からの財源配分などで賄われる保育園の年間運営費は、各園の規模によって異なり、平均額は公立で約9549万円、民間は約7941万円。市からの一般財源は、人件費の高い公立に多く配分されるため、12園全体で7億2111万円(02年度決算)と、民間32園の6億6881万円(同)とは開きがある。
ただ、民間は財政的な格差を特別保育で補い、並行してサービス面をPRするなどしてきた。今年10月現在の特別保育実施状況は、民間が延長保育を15園、休日保育を2園、一時保育を31園で実施しているのに比べ、公立は一時保育が1園のみにとどまっている。
市の西尾正範助役は「身内を否定することになるが、あまりにも不公平感がある。公民の財政格差を解消して平等に配分するためにも、民営化が必要になる」と話す。
一方で、桔梗など公立の保護者は、国の基準を上回る保育士の配置に加え、公立に経験豊富な保育士が多いことなどから、「民間は公立の運営を模範としている。市全体の保育水準向上のためには、公立はなくてはならない存在」と主張し、反対活動を続けた。
そこには「公・民の格差を均等化したい」という市と、「民営化すると保育レベルが下がるのでは」という保護者側とのボタンの掛け違えが横たわっており、市と保護者との認識には大きな違いがある。市の短期間の説明だけではそれが解消されなかったのが実情だ。
西尾助役は断念を受け、「市と保護者で委員会を作り、冷静に議論を尽くしたい」、市職労の藤盛敏弘委員長は「延期は当然と受け止めるが、単に公立だけが良くなればいいということではない。市の保育行政全般の在り方を、組織内で協議、検討したい」と、それぞれに話す。
桔梗保育園の来年度からの実施はひとまず延期となったが、問題がこれで終息したことにはならない。市、保護者ともに議論に十分に時間をかけ、互いに納得いくまで意見を戦わせるしかないと言えそうだ。
提供 - 函館新聞社
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