ねじれの波動(下)
update 2003/11/12 11:17
「鉢呂(吉雄)は本当に行ってしまったんだな」。9日夜、金田誠一(民主)と、道4区に国替えした鉢呂のアベック当選に酔いしれた金田陣営。関係者の1人はテレビの向こうで万歳を繰り返す鉢呂を見つめながら、しんみりした。戦いを終え、道南の主(あるじ)を引き受けた金田に、鉢呂の影が重くのしかかる。
鉢呂は道南政界の重鎮佐藤孝行を2度も破り、保守王国にくさびを打ち込んだ立役者。党本部の国替え要請に、後援会は最後まで無所属出馬を模索し、金田陣営との確執を浮き彫りにした。
とはいえ、鉢呂の地盤を引き継ぐことが金田勝利の絶対条件。金田自らが鉢呂後援会の松浦百秋会長らを口説き、選対幹部には鉢呂陣営の名が連なった。鉢呂後援会は「後援会の晩節を汚せない」と手を貸し、金田もことあるごとに「鉢呂後援会の皆さんのおかげ」と持ち上げた。
当選から一夜明けた10日、金田は道南唯一の国会議員になった重みをかみしめた。「今までは鉢呂さんに甘えてきた。原点に立ち返り、重みに押しつぶされることなく、しっかりと頑張りたい」。
金田の並々ならぬ決意に対し、党関係者を含め、冷めた目で見る人は少なくない。政治活動そのものが“ドブ板”だった鉢呂と、つい比較してしまうからだ。
鉢呂は市町村の陳情に一つひとつ応じ、予算のめどが付けば自筆で書き込んだ資料を必ず関係者に送った。「野党議員とはいえ、圧巻だった」。自治体、経済界関係者は口をそろえる。
「全国探してもあんな議員はいない」(民主党関係者)という“マメさ”を、金田に求めるのは酷な話だが、鉢呂流に慣らされた関係者には通用しない。「あれだけやってくれれば、野党でもいいんだ」(経済人)。
鉢呂後援会の協力があったとはいえ、「相手が弱かっただけで金田は強くなかった」(選対関係者)。佐藤健治(自民)、前田一男(無所属)の保守分裂が勝因とするのが、一致した見方だ。頼みの鉢呂後援会は近く解散する。次回選挙で金田は独り立ちを求められる。
「金田は予想以上にとり過ぎたかな。今回大差がついたことで、今度こそ保守は一本化の必要性を痛感したはず」。今回の選挙で10万票の大台に乗ったものの、保守2人を合わせた得票数は金田を上回った。選対幹部の危機感は強いが、次回に向けた対抗策は今のところ見いだせていない。
「正直、一騎打ちになれば厳しい。これから金田が何をするのかにかかっている」(関係者)。当選後の活動こそ、金田はもとより、道南民主党にとっても、議席死守をかけた正念場の戦いになる。(文中敬称略)
提供 - 函館新聞社
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