各社“生き残り”へ正念場

update 2003/7/30 11:50

 旅行業界大手の近畿日本ツーリスト(本社・東京)が8月末、函館営業所を閉鎖することが決まり、函館市内の旅行代理店の苦戦している状況が浮き彫りとなった。長引く不況に加え新型肺炎が追い打ちをかけ、海外旅行客も激減している。他社も増収策が見いだせず、人件費の抑制や店舗賃料の軽減など、経費削減を力に注いでいるのが実情だ。各社は、生き残りをかけた正念場を迎えている。

 旅行代理店の主力商品はパックツアーで、薄利多売型が中心だ。ターゲットは中間所得層だが、衣食住のような“必要支出”とは違うため、景気に一層左右されやすい。ある代理店の営業担当者は「今はお金がないといって修学旅行に行かない子もいる時代。そんな状況で、家族旅行に行けるわけがない」と漏らす。

 さらにイラク戦争、新型肺炎など心理的な不安から海外旅行自体を自粛する動きが強まった。国際観光振興会の推計では、6月の出国日本人数は、対前年同月比46・4%減の66万7000人と大きく落ち込んだ。

 代理店は、収入が伸びない限り、支出を抑えるほかない。その手始めに、人件費を含め、重くのしかかる店舗運営を見直すのが、企業の経営論理。特に景気の低迷が著しい函館は、店舗の統合や廃止などの対象になりやすいのも事実だ。

 近畿日本ツーリストの営業所廃止も、全社体制再構築の中で、経営効率を高める一環であることは間違いない。同営業所はすでに昨年11月に発表した組織改編により、支店から札幌教育旅行支店所属の営業所に変更。その時点で窓口業務は閉鎖していた。

 こうした動きに他社も静観しているわけではない。あるエージェントは「今すぐ撤退する考えはないが、常に頭の片隅にその2文字はある。業績が確保できなければやむを得ない」という。インターネット予約などが一般的になりつつある中では、対面販売の支店窓口としての価値も薄れつつある。別の代理店は「そもそも今のご時世、待っても人は来ない」と、敷地面積の小さい店舗への移転を検討する動きもある。

 旅行業界は、これまで新型肺炎などの影響で停滞していたが、一部に復調の兆しも見え始めている。観光都市・函館への入り込みも例外ではない。だが、「市民の消費マインドは回復の兆候がなく、入りと出のバランスが釣り合うにはほど遠い」という指摘もある。

 景気回復以外に抜本的な解決策が見えない中、関係者は特需に期待を寄せるほかない。「せめて、この間の高校野球全道大会で、函大有斗高が優勝し、甲子園に行ってくれていれば…」との声も聞こえる。

 景気低迷による消費マインドの冷え込み→売り上げ減→不採算店舗の廃止―というスパイラル構造は今の日本経済の縮図となっている。

提供 - 函館新聞社



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