10年に一度の漁業権切り替え・基準強化「漁師をやめるか、条件を飲むかといわれれば仕方ない」

update 2003/7/28 09:23

 10年に一度の漁業権切り替えを9月に控え、道南関係では、噴火湾のアカガレイを取る網目を大きくすることや、ミズダコの採捕基準を厳しくすることなどが行使規則に盛り込まれた。規則を受け入れない限り、これらの漁業権は取得できないことから、漁業者からは「漁師をやめるか、条件を飲むかといわれれば仕方ない」との声も聞かれる。渡島支庁では「どれも資源保護には必要な内容」と話し、漁業者に理解と順守を求めている。


 戸井町の2漁協が反対していた道南のミズダコの採捕基準は、現行の「1匹2キロ未満は逃がす」というものから「3キロ未満は逃がす」ことに決まった。

 道南のミズダコの漁期はおおむね11月ごろから春ごろまでで、6月ごろとされる産卵期の漁は行われていない。過去の標識調査では2キロのタコが30―40日で3キロになることが確認されている。同町漁業者からは「産卵期でもないタコを1カ月延命させることで本当に資源保護になるのか。今回の(行使規則改正による)保護策は机上の空論だ」との不満が根強い。

 ミズダコ漁は、玉の下に針と疑似餌(ぎじえ)を付け、えさを抱きかかえるようにして食べようとするタコを引き上げる「ダマナガシ」と呼ばれ方法が一般的。戸井町漁協では「針がタコの頭に刺さるなど、傷ついて死ぬケースも多い。逃がして生存率が上がるのかは疑問」と語る。

 また、ミズダコを生鮮で扱っているのはほぼ戸井町だけで、ほかは水煮などの加工品にしているという点も問題とされている。同町漁業者からは「戸井だけが基準を守ったって意味はない」と憤りの声も聞かれる。実際、同町以外の漁業関係者の中には「内臓を抜いて加工してしまえば2キロか3キロかなんて分からない。基準はあってもなくても同じ」と話す人もいる。

 ミズダコは同町の高齢漁業者にとって貴重な収入源。両漁協は「大きいタコは沖に出てしまうので、大型の船でしか取れない。浅いところにいる小さなタコを小船で取っている高齢者には大きな打撃になる」と指摘する。

 ただ、渡島支庁水産課では「だから基準を設けず好きなように取っていいとはいかない。我々の調査では資源は確実に減少しており、絶対に必要な基準変更。各漁協さんにも最終的には納得してもらっている」と説明。「パトロールを強化するなどして、さらに効果を高めたい」としている。



 噴火湾は道南のアカガレイの約97%を水揚げしており、周辺漁協ではホタテと並ぶ収入源ともなっている。今回、網目を3寸5分(約10・6センチ)から3寸7分(約11・2センチ)に拡大することで決着したが、95年生以降、種を支える「卓越群」と呼ばれる大群が出ておらず、「資源は枯渇寸前の状態で間に合うかは微妙」(函館水試)。水産関係者には「基準はまだ甘い」との認識も強いようだ。

 ただ10年前の漁業権切り替えに合わせた行使規則改正のときにも、網目を3寸5分から3寸7分に拡張する議論があったが、一部の猛烈な反対を受け3寸5分のまま据え置かれた経緯がある。今回は「20年越しの大改革」ともいえ、同支庁では「漁業者の資源保護意識が高まっていないと実現は難しかった。大きな一歩」と話す。

 漁獲量を落とす基準強化は漁業者にとって歓迎しづらい部分が大きいが、資源管理型漁業は時代の流れでもある。漁業者と行政の声の隔たりをどう縮めるか、課題を抱えながら9月1日、新しい漁業権のもとで、新たなスタートが切られる。

提供 - 函館新聞社



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