高井さん、スーリコフの「1億円」絵画寄贈
update 2003/7/9 09:45
19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍したロシアを代表する画家の一人、ヴァシリー・イヴァノビッチ・スーリコフの日本国内唯一とされる作品「女子修道院を訪れる王女」の習作(1912年、油彩)がこのほど、道立函館美術館に寄贈された。評価額は1億円で、道立美術館に寄贈された絵としては過去最高額。
寄贈したのは、函館市船見町4の無職、高井醇子さん(74)。「個人で所有するよりも、公のものにして、広く見てもらいたい」と先月、同館に譲った。今後は「美術館で展示されるときに鑑賞にくるなど、一般の人と同じくこの絵と付き合っていきたい」と話している。
寄贈された作品は60号で、縦92センチ、横132・5センチ。完成作の下絵として別なキャンバスに描いた習作だが、大きさと完成度からみて最終段階のものとみられる。当時のソ連との漁業交渉などに通訳として携わっていた高井さんの義父である故・善喜久さんが1932年、絵の荘厳さに心打たれ、買い求めた。
絵は一時、日魯漁業本社(東京)の社長室に寄託されていた。漁業交渉などで日ソ関係が重苦しい雰囲気となっていた56年、来日したソ連の文化省次官ケメネフが同社で本作を見て「長い間、行方を探していた作品」と発言。当時の社長で、北海道初の大臣(運輸)も務めた函館出身の平塚常次郎氏が「日ソ親善の一助に」と寄贈を申し込む“事件”が発生したことも。日本の画壇の反対運動や高井家が返還を要求したため流出はしなかったが、絵の価値を伝えるエピソードとして知られる。
高井さんはこのほか、スーリコフの孫のミハイル・ペトロヴィッチ・コンチャロフスキーが描いた縦63センチ、横53・3センチの義喜久さんの肖像画「高井義喜久像」(1932年、油彩)=評価額60万円=も合わせて寄贈した。
2枚の絵は、同館で29日から9月23日の会期で開かれる「ユトリロ展」で特別公開される。
提供 - 函館新聞社
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