独自の「井上カラー」どう打ち出す

update 2003/4/29 10:21

 「2期目になって、これまでの政治手法を変えることにはならない。1期目に約束したことは達成したと自負しており、今期もそういう気持ちで取り組みたい」。公約は全部達成する―。28日の就任記者会見で、井上博司市長は2度目の航海への意気込みをこう口にした。

 市営バスの民営一元化、函館駅前再開発、公立はこだて未来大学開学と、木戸浦隆一前市長(故人)が緒に就けた3大プロジェクトという“遺産”を、異常なまでのスピードで実現にこぎ着けた1期目と違い、2期目に独自の“井上カラー”をどう打ち出していくか。カジ取り役としての真価が問われる重要な4年間だ。

 その一例が経済・産業の活性化。産学官連携によって昨年から動き出した、未来大や北大水産学部を軸とする「国際水産・海洋都市構想」の実現は、2期目の取り組みいかんによって、成否の行方を大きく左右する。「2、3年で形作られるものではないが、(雇用対策など)緊急的な課題と同時並行で進めていく」と鼻息も荒い。当面は同構想の策定と、7月に本申請を先送りした「マリン・フロンティア科学技術研究特区」の実現に照準を当てる。函館は観光産業に支えられたマチだが、それだけに頼らない第2、第3の産業興しへの挑戦が始まった。

 会見ではまた、サハリンで進められる石油・天然ガスのプロジェクトと連動し、「空と海の活用による貿易振興に取り組む」と強調し、推進組織を今秋に立ち上げると明言。実際に“空”は新函館空港ビルが2006年1月に完成を予定、“海”は港町ふ頭の水深14メートル岸壁に加え、同12メートル岸壁の供用開始を本年度中に控えている。加えて“陸”も新函館駅舎が6月に開業するなど、陸海空のネットワークが整備されつつあり、これらを投資に見合った市民利益にどう結び付けていくか、費用対効果に議会などから厳しい目が注がれることになる。

 産業経済の活性化と並行して重要課題に挙がるのが行財政改革。井上市長は1999年の就任以降、4年間で当初計画を66人上回る284人を削減、4年間の効果額の累計は66億8000万円に及ぶとされる。

 ただ、一般市民にはそんな“節約”も、実感を持って受け止められていないこともまた事実だ。職員給与は人事院勧告に準じて2・04%削減、民間でボーナスにあたる期末手当も、支給月数を同じく年0・05月削減したものの、不況が抜き差しならないところまで来た民間との格差は一向に縮まらない。

 井上市長は、記者会見前に行った職員への訓示で、これまで幾度となく口にした「民間に委ねられるものは委ねる」という姿勢をあらためて強調した。職員削減や業務見直しを徹底し、ごみ収集や学校給食業務などでの「アウトソーシング(外部委託)」を視野に入れ始めた。公務員が批判の対象とされる昨今、どれだけの覚悟を持って市役所のスリム化を図るか、井上市政の正念場ともいえる。

 「変わりゆく時代に、勇気を持って」。2期目に打ち出したキャッチフレーズが言葉通りとなるのかどうか。再び「函館丸」の船長となった井上市長の荒波を乗り切る手腕が試されようとしている。


―― ◇ ――



 統一地方選が幕を閉じ、井上市政の2期目がスタートした。長引く不況下での雇用創出や産業育成、さらに行財政改革の一層の推進など、井上市政を取り巻く難題は少なくない。課題を整理し、今後4年間における市政運営の行方を占った。

提供 - 函館新聞社



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