昆虫標本60年ぶり里帰り

update 2003/2/21 10:39

 昭和初期に活躍した函館出身の漫画家、小山内龍(1904―1946年)が約60年前、大野町で採集した昆虫標本がこのほど、里帰りした。長野在住の小山内の長男が所有していた標本を、函館市内の昆虫研究家が譲り受けた。標本は110種300点以上に上り、市内の民間団体は28日、その活用と管理を考える集いを開き、市民から広く意見を聞くという。

 小山内龍は高等小学校を出て貨物船船員を勤めた後、独学で絵画の勉強を始めた。31年に写真雑誌の懸賞に入選し、漫画家としてデビュー。芸術家・岡本太郎氏の父、一平氏らに師事した。42歳で他界、大野町の法亀寺に今も眠る。

 昆虫との出合いは、菓子のパッケージに使う昆虫の挿絵を依頼を受けたのがきっかけという。今回、里帰りした標本は45年から1年間、大野町で疎開中に集めたもの。著作の一つ「昆虫放談」にも、同町でのエピソードが盛り込まれている。

 標本はチョウやトンボ、バッタなど計110種類319点。1匹ずつパラフィン紙に包んだ状態で届けられた。同町では今は見られない絶滅種もある。函館昆虫同好会代表の中嶋康二さん(56)=学習塾経営=が、手紙で交流を続けていた小山内の長男・澤田洋太郎さんから標本の鑑定や管理を依頼され、譲り受けた。

 標本の里帰りを受け、道南の文化財保護に取り組む市民団体「21世紀の郷土を考える会」(菅野寿恵代表)は、保管や活用方法を探る集いを企画。28日午後6時半から市民会館で開き、さまざまな立場の市民の意見を聞く。

 菅野代表は「市民が地域の文化財に目を向け、関心を持つ契機としたい。ぜひ参加を」と広く市民に呼び掛けている。問い合わせは菅野さんTEL090-2873-1159。

提供 - 函館新聞社



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