海中ネットで“コンブ畑”作り

update 2003/9/28 10:25

 北大大学院水産科学研究科などは、海中に張ったネットに海藻を根付かせる「海洋培養システム」を構築、コンブの生育研究などで成果を上げている。同システムは、砂地や岩場といった地質を選ばず、比較的安価に設置できるのが特徴。函館市内の住吉漁港近くの海域では、同システムでマコンブなどが成長することが確認されている。水産関係者の間では、ほぼ函館近海でしか取れないガゴメなど、価値の高い海藻での技術確立に期待が高まっている。

 ロープ(コットン製)で組んだネットは1・5メートル四方の大きさで、数カ所に重りが付けられている。同漁港近くの水深6メートルの海中でマコンブとミツイシコンブを根付けた実験では、条件次第でしっかり生育することが分かった。ネット1升の間隔はコンブの量と質を考えると、ミツイシコンブが30センチ、マコンブは50センチが同海域では最適なことも判明した。

 ネット状にロープを組んで固定する留め具は、耐久性などから、プラスチック製が最適だが、同研究科などは、分解可能な天然素材の使用を模索。ネットも、トウモロコシなど、自然界で分解されやすい素材にし、台風などで流出しても、自然環境に影響を与えないようにする方策を検討している。

 コンブの再生条件のデータ採取も同時に進めており、培養技術が確立されれば、必要な海藻を枯渇させることなく、近海で半永久的に採取し続けることが可能となる。研究を指導する同研究科の安井肇助教授(海藻繁殖学専門)は「沖まで漁に出られない高齢漁業者らの安定収入につながれば」と期待する。「将来、函館周辺の未利用海域が海藻の森になって、道南海域の生物が集まる場所になってくれたら」と語る。

 10月からは、同海域の水深10メートルほどの海中にネットを張り、ガゴメの再生条件などの研究も行う予定。同月から本格稼動する「都市エリア産学官連携促進事業」(函館地域振興財団などが推進)のガゴメ培養計画にとっても貴重な基礎研究となる見通しだ。

 安井助教授はいずれの研究でも中心的役割を担っており、「繁殖と再生のメカニズムを解明し、将来は、欲しい種類の海藻を計画的に育てられる“海中庭園”にできたら」と話している。(後藤泰良)


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 ガゴメ
 がん治療に期待のかかる「フコイダン」と呼ばれる物質を多量に含み、成分を抽出した製品は1グラム数千円で取り引きされるなど、価値が高い。青森などでも繁殖しているが、水深20メートルほどの海中にあり、漁はできないのが現状。暖流と寒流のバランスがガゴメに適しているとされる道南海域が主な産地となっている。

提供 - 函館新聞社



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