野外劇 来年は規模縮小
update 2014/11/4 10:07
国の特別史跡・五稜郭跡に特設ステージを作り、市民ボランティアが運営、出演してきた「函館野外劇」は来年、郭内で初めて開いた今年よりも規模を縮小して開催する方針を固めた。主催するNPO法人市民創作「函館野外劇」の会(中村由紀夫理事長)が今年の公演終演後から複数回開いた理事会で決定。同会事務局は「来年は野外劇の可能性を探求し、北海道新幹線が開業し入場者増加が見込まれる16年には、今年以上の公演ができるようにしたい」と意欲を見せている。
野外劇は1988年の初演以来、五稜郭公園の東南側に、堀などの地形を生かしたステージを作り、1000人以上が収容できるスタンドを設けて開いてきた。今年は3月に石垣が崩落した影響で開催が危ぶまれたが、場所を郭内に移して実施。しかし、開催決定が遅れたことによる周知不足が響き、入場者は過去2番目に低い5430人にとどまった。
同会の累積赤字は昨年まで約1900万円。スタッフの高齢化など苦しい事情も抱える中、昨年は野外劇の提唱者で故フィリッポ・グロードさんの追悼公演として、今年は五稜郭築城150年記念として開催。郭内特設会場に毎回、客席のいすを並べ、ステージ規模を小さくし、光線などの演出も縮小。チケット収入は減少したが、舞台制作費用も抑えられたことで、本年度は昨年度に続き黒字決算が見込まれるという。
大きな節目ではない15年について理事会では「来年は休演し、北海道新幹線開業の16年に行う」「今年で最後」などの意見も出ていたが、「やるなら五稜郭で」の意思ははっきりしていた。最終的には「一度止めたら再開は難しい」と来年の開催を決定。さらに「新幹線開業年に向けて力を蓄える」とし、ステージを作らないなど大幅な規模縮小を決めた。同会の里見泰彦事務局長(71)は「石垣の復旧には数年かかるだろうという見解も聞くが、どんな形でも五稜郭で続けることが、グロードさんへの遺志を引き継ぐことになる」と話す。
公演内容は、12月に予定する臨時総会までに案を用意する。日中に行うことで修学旅行生に観劇しやすくすることや、殺陣(たて)のワークショップを取り入れ、各地で講演会を開くなど、「今年とボリュームは変えないものを用意し、16年開催に向けた予告としたい」(同会事務局)と意気込む。
五稜郭の使用許可は毎年の申請が必要なため、来年以降について不透明な部分も少なくない。里見事務局長は「野外劇は子供たちにとって函館の歴史を学べる教育素材であり、生涯学習としても活用できる。貴重な観光資源でもあり、他都市に誇れるものを無くすわけにはいかない」と強調した。
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