北方開拓と開教は一体…「みちのくと北海道の宗教世界」出版 函教大・佐々木特任教授

update 2013/11/21 10:02


 道教育大函館校の佐々木馨特任教授(67)=日本中世宗教史=が、著書「みちのくと北海道の宗教世界」を北海道出版企画センターから出版した。北方地域の開発や形成に宗教が不可欠であったという「開拓・開教一体論」を、通史的に論述している。

 みちのくと北海道の「開拓と開教」の歴史を第1、2部で通観し、北方開拓全体に果たした宗教の役割を第3部と付編で論考。地域が開かれる際、まずは地域の守護や産業の護持を祈願する神社やお堂が建てられ、地域が形成され人々が定着すると「供養」という形で寺院が建立されてきた歴史を述べた。

 津軽海峡を挟み、交易や交流を重ねてきたみちのくと道南は、地理的にも歴史的にも一体性を持っていたことを詳述。北海道の宗教世界として、志海苔古銭の出土や、13世紀末に日蓮の高弟・日持が渡道したと伝えられる函館市銭亀沢地区の事例を検証した。

 佐々木教授によると、道内には現在、寺院が約2200、神社が約500あるが、江戸時代には神社が寺院の何倍もあったという。「それだけ、神社は地域を開く際に欠かせない存在だった。弁天社、稲荷社、恵比須社などの諸神社の造立を通して、蝦夷地を和人化していった」と語る。

 佐々木教授は44年間にわたり中世宗教史や北海道仏教史、青森県や道南の自治体史、日蓮、日本人の死生観などの研究を重ねており、単著は18冊目。「地域や産業の守護、人々の精神生活の中心にあった神社や寺院に対する認識を新たにしてもらうきっかけになれば」と語る。

 A5判、332ページ。2940円。問い合わせは北海道出版企画センター(TEL011・737・1755)か最寄りの書店へ。

提供 - 函館新聞社


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