訴訟時期 函館市慎重 大間原発工事再開1年

update 2013/10/1 10:22


 電源開発(東京)が大間原子力発電所(青森県大間町)の建設工事を再開し、1日で1年が迎える。建設に強く反対する函館市は福島第一原発事故を踏まえた差し止め訴訟を準備している中、原発問題に関する国内の世論は必ずしも高まってはいないのが現状。市は各地の原発の再稼働の動きを見据えながら、慎重に提訴時期をうかがっている。

 同社は昨年、国の革新的エネルギー・環境戦略の決定を受け「建設中の原子力発電所の取り扱いが明確になった」として10月1日に工事を再開した。工事進捗(しんちょく)率は東日本大震災以前と同じ37・6%のままだが、同社大間原子力建設所は「原子力規制委員会が7月に策定した新しい規制基準に影響のない範囲で工事を行っている」としており、原子炉建屋の地下部分や取水・放水設備などの建設を進めている。

 来春にも規制委に対し、安全対策を満たすことを証明する原子炉設置変更許可を申請する方針で、「認可が下り次第、新基準を踏まえた工事に入る」(同建設所)とする。

 一方で、函館市をはじめとする道南の各自治体や経済団体、市町会連合会などは強く反対。工事再開後10月に無期限凍結を求める中央要請を行ったほか、政権交代後の今年2月にも要請活動を行ったが、主だった進展はみられない。

 市は訴訟準備経費2300万円を計上し、今年1月に河合弘之弁護士(東京)ら弁護団10人と契約。訴状では国と同社に対し、地方自治体の存立権や、半径30`圏内の周辺自治体の同意の必要性を主張することを掲げた。

 工藤寿樹市長は9月6日の市議会で「今訴訟を提起しても一地域のことに見られ、かすんでしまう。原発再稼働に関する世論の盛り上がりや、周辺自治体の声が高まる時期があると確信している」と述べ、従来からの見解を繰り返した。30日は取材に対し「事故があり得る以上は同意を得るべき。今は訴える時期を考えるだけ。そう遠くはない」と話した。

 周辺自治体や経済団体も、市に同調する姿勢は変わっていない。高谷寿峰北斗市長は「安全性が確認され、国民的な合意が得られるまで建設すべきでない。新たな規制基準も福島第一原発事故の検証を反映したものではないと受け止めており、承服できない」。中宮安一七飯町長は「フルMOXの危険性は高く、事故が起こった場合、農業を基幹産業とする町への被害は計り知れない。裁判が最も有効な手段と考えられるので、できることがあれば函館市に協力したい」と話す。

 また、松本栄一函館商工会議所会頭は「地域の存亡に関わる問題であり、建設阻止に向けて意志が揺らぐことはない。今後も行政と足並みをそろえていく。訴訟となれば、地元経済界は全国に呼びかけて支援していく」としている。

提供 - 函館新聞社


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