恵山に迷いハクチョウ 住民に見守られ「ハク」すくすく

update 2013/3/31 10:25


 函館市の恵山地区で、1羽の飛べないオオハクチョウが地域住民に見守られながら生活している。群れからはぐれたとみられ、昨年夏ごろからこの地に居ついたという迷い鳥。住民からは「ハク」と呼ばれ、人懐こい姿が親しまれている。

 ある日の昼下がり。「ハクー、ちょっと待ってなさい」。近所の女性がハクの姿を見つけると、すかさず食パンを手に家の中から飛び出してきた。慣れた手つきでちぎったパンを小さなバケツに投げ込むと、元気に頬張るハクの姿に、女性は目を細めた。「きょうは初めて来た。来てもこっちが気づかずにいると、玄関まで来るのよ」

 住民の話を総合すると、ハクは近くの女那川に生息。恵山地区には毎年数組のハクチョウが飛来して越冬しているが、ハクは1羽でいることが多い。「飛ぶ姿は見るが地面すれすれで、長くても100メートル程度」(ある住民)といい、他の海鳥に混じって波打ち際を行き来する姿も見られる。

 昨年夏ごろからやつれた姿で住宅地に来るようになり、大澗町の男性宅の敷き石がいつしか“定宿”のように。男性(80)は「浜に来て、おなかがすくとやって来る。時折道路に出てくるので危なっかしく、皆で面倒をみるようになった」と振り返る。

 近くで理髪店を営む野呂裕さん(72)もハクの愛くるしい姿に魅せられている一人。「大きな体に目玉がちょこんとあり、パンをやればクーッ、クーッと鳴く。それがまためんこいんだ」。今では毎朝、双眼鏡でハクの姿を確認することが日課だ。

 一部住民は、ハクが生活していける土地に移転させようと行政の保護を願い、今月下旬には渡島総合振興局が現地を視察。しかし、捕獲が難しいことなどから当面は静観する考え。「鳥インフルエンザ感染のリスクがあるので餌やりは控えてほしいが、居付いてしまっており、遠くにも飛べない。住民が善意でやっているなら見守りたい」(環境生活課)と話す。

 日本野鳥の会道南桧山の会員、一戸静夫さん(77)は「会としては鳥獣保護員に任せたい」とした上で「地域の人々が野鳥と交流を持つことは悪いことではない。優しい気持ちで見守ってほしい」と話す。

 今ではすっかり地域の一員となったハク。ハクチョウはこの時期に日本を離れてシベリアへと旅立つが、「このまま居続けるのでは」というのが大方の予想。野呂さんは「いつまでも元気で、私たちのそばにいて」と話し、すくすくと成長することを願っている。

提供 - 函館新聞社


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