功績 人徳のなせる業 グロードさんの思い出語る

update 2013/2/4 10:20


 NPO法人市民創作「函館野外劇」の会前理事長、社会福祉法人函館カリタスの園理事長で、昨年12月25日に85歳で死去したフィリッポ・グロードさんをしのぶ会が5日午後1時半から、五島軒本店(末広町4)で開かれる。函館を愛し、市の文化活動、社会福祉事業に功績を残したグロードさんの、その黎明(れいめい)期を知る2人に追憶を語ってもらった。

 「グロードさんの人を愛する気持ちは、誰よりも強かった」。50年近い親交があったという函館カリタスの園初代理事長、原一正さん(88)は振り返る。

 1962年、グロードさんは函館カトリック元町教会主任司祭として来函。原さんを信者として迎えた。72年、募金活動にも熱心だったグロードさんは市から「高齢者が増える時代が来る。何かできないか」と老人福祉施設建設の相談を受けたという。原さんは「当時の函館には老人が夢や希望を持って暮らせる施設はなく、すぐに準備に掛かった」と話す。

 同教会を母体に施設建設運動を展開し、経済界の協力を取り付けることに成功。74年に建設期成会を発足させた。市民や道外のカトリック教会から約1億円が集まった。「グロードさんの人徳のなせる業」と原さん。そうして77年に開設した特別養護老人ホーム・旭ケ岡の家は静かな個室や広い廊下があり、当時は全国でも珍しかったという。

 原さんは「グロードさんは家族のような存在。感謝の念しかない。今の施設職員にも創設の理念は受け継がれている。私もしっかり見守っていく」と話す。



 1988年に始まり、今では函館の夏を代表する函館野外劇。国の史跡・五稜郭を舞台として使用する許可を得るのは困難で、市民の「夢」が実現したのは、グロードさんの存在が大きい。創作委員として公演立ち上げの苦労を共にした函館市千代台町の画家外山欽平さん(75)は「実現不可能と思われたことが、今は当たり前のように行われている。グロードさんの野外劇に懸けた思いを継がなくては」と語る。

 親交のあったフランス人の日本研究家が、在フランス大使館の文化担当書記官として勤務していた植木浩さんと縁があり、植木さんが帰国後に文化庁長官となったことで、グロードさんは野外劇の五稜郭使用を強く懇願し、一気に実現へ向かった。「ただの縁ではく、グロードさんの人がらのおかげ」と外山さん。

 「五稜郭に函館の街の将来を見た神父」。外山さんは自身が制作したカレンダーにしたためた。「五稜郭に故郷を感じたのでしょう。ここを舞台に市民が創作したもので、市民が集まって楽しんでもらうものを作る思いが強かった」と振り返る。「みんなが良くなるように、細かく神経を使っていた。あんなに頭の柔らかい人はいない」。創作などの現場では常にスタッフの意見を尊重したという。

 野外劇の現場を離れて約10年。「函館の力を感じたからこそ、グロードさんも力を注いでくれた。その思いを改めて感じてほしい」と期待する。



 しのぶ会は、社会福祉法人函館カリタスの園主催。函館日仏教会の関口昭平名誉会長らが故人との思い出を語り、参加者で祈りをささげる。供花、香典などは辞退する。公共交通機関での来場を呼び掛けている。 問い合わせは同法人TEL0138・50・2121へ。

提供 - 函館新聞社


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