カネサク大出商店、庶民の味守り100年
update 2013/1/14 10:26
昔ながらのイカ塩辛を製造する函館市の老舗メーカー「カネサク大出商店」(大手町20、大出年子代表)が、1913(大正2)年の創業から今年で100年の節目を迎えた。鮮度のいい地場のスルメイカを原料に、庶民の味≠提供し続けて1世紀。松田康嗣工場長(65)は「老舗としてこの味とブランドをずっと守り続ける」と感慨を新たにしている。
巨大な杉樽がいくつも並ぶ工場の熟成室。松田工場長は、砂糖やイカの内臓などにじっくり漬けたイカをかきまぜながら、発酵状態の確認に余念がない。「樽は水分除去など発酵に適しているが、カビが発生しやすい。気が抜けません」と表情を引き締める。
同社は、海産物を商っていた山崎作次郎氏が創業。当時から函館は、日本海や太平洋を北上するイカが一年中水揚げされた。本州の漁業者も行き来する中、イカを使った水産加工品が誕生。その一つが塩辛だった。
アミノ酸が豊富な塩辛は栄養バランスが良く、保存食として早くから庶民に愛された。戦後も、石炭産業や農地改革を支えた労働者が腹ごしらえに食べたと伝えられる一方で、「戦中は戦略物資として軍人に重宝された」(松田工場長)。
高度成長時代の50年代後半、冷蔵庫が普及すると、後年冷凍技術も発達。水揚げ後すぐに凍らせる「船内急速冷凍」が誕生し、イカの鮮度維持は飛躍的に向上した。
欧米料理の普及に伴い、日本人の食生活も徐々に変化し、甘い物を好む人が増加。松田工場長によると、その傾向は塩辛も同様で、特にここ数十年間で流通した塩辛は大半が甘みのある現代人向きだが、「うちの塩辛は昔ながらのしょっぱさが根強い人気」と分析。「爆発的に売れるわけではないが、いつの時代も気付けば売り場から商品が消えている。それがカネサクの塩辛です」。松田工場長は誇らしげに語る。
近年は食品添加物を使わない新商品として「いかと砂糖と塩で造った塩辛」を販売したが、主力は昔からの味を守り続ける、定番の塩辛だ。函館をはじめ道内の大手スーパーなどを中心に、東北や関東圏にも展開し続ける。
松田工場長は「100年続けてこられたのはお客さんがいたから。私も常にお客さんの顔を思い浮かべながら商売してきた」と振り返り「これまでと変わることなく110年、120年と伝統の味を提供し続ける」と話している。
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