函館と広島、コーヒーがつなぐ縁

update 2012/11/10 10:30


 函館市陣川町の小さなログハウスが、地域住民の“隠れ家”として密かな人気を集めている。そのあるじは、広島県在住の斉藤久男さん(70)。かつて青函連絡船の乗務員として函館に住んだことがきっかけでログハウスを構え、コーヒーを自家焙煎(ばいせん)して知人らに振る舞い、喜ばれている。現在も函館と広島を行き来する生活を送っており、「自分の楽しみを満喫したい」と斉藤さん。コーヒー豆がつなぐ函館との縁を大切にしながら、住民たちと気さくに語らう毎日を過ごしている。

 コポコポコポ…。慣れた手つきで斉藤さんがコーヒーを入れると、3坪ほどの狭いログハウスは、豊かでほろ苦い香りに包まれる。

 生まれは愛知県。24歳の時、連絡船の乗組員として函館に勤務した。連絡船の廃止に伴い、広島の宮島航路に転勤して自宅も構えたが、離任時に購入した土地に、12年前にログハウスを建てた。

 コーヒーが大好きで、函館にいた時は市内のほとんどの喫茶店を回ったという。最初は手で豆をいっていたが、趣味が高じて13年ほど前に焙煎機を購入する熱の入りよう。「おいしく入れるには、豆と水をきちんと量らないと」とこだわりも強い。

 商売で営業する喫茶店ではないが、ログハウスにはうわさを聞きつけた住民が日々訪れては、コーヒーとともに他愛のない話を楽しむ。「五稜郭の夢」「四稜郭の華」などと名付けたオリジナルブレンドも用意しており、手づくりの味を求めるファンも多い。2カ月前から通い始めたという市内の女性(69)は「入れる温度や心得を気軽に話してくれる。私の隠れ家よ」と、すっかり気に入った様子だ。

 毎年4月ごろ函館に訪れて畑を耕し、コーヒーを楽しみながら、雪がちらつくころに広島に戻る生活を送っており「渡り鳥みたいなもんさ」と屈託ない。今年は12月13日でハウスを閉めて広島に戻り、春になったらまたやって来る。「函館は人も街も大好き。ここを憩いの場所として愛してくれれば」と、ささやかに願っている。

提供 - 函館新聞社


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