文学館説明員の竹原さん 「啄木の函館」出版

update 2012/8/30 10:17


 函館市文学館(末広町)の説明員、竹原三哉さん(70)が、歌人石川啄木(1886〜1912年)の評論集「啄木の函館―実に美しき海区なり―」を自費出版した。膨大な資料にあたり、啄木と妻節子の心情や当時の函館の雰囲気を浮かび上がらせた労作。竹原さんは「函館で過ごした132日間は人生最良の時間。暮らしぶりや文学仲間との交流に迫ることができた」と話している。

 竹原さんは元中学校教員で、2002年の定年退職後すぐにボランティアの説明員として同館で勤務を始めた。

 「それまでは有名な短歌2、3首を知る程度だった」(竹原さん)というが、全国から訪れるファンに説明するため、研究を開始。その際に論文をこつこつと書きため、10年間の成果としてまとめようと思ったのが出版のきっかけ。没後100年に合わせて発表した。

 本は2部構成で、第1部は「函館の啄木」と題した函館案内記。護国神社(旧招魂社)や大森浜、東浜桟橋など市内のゆかりの地を、一家の暮らしぶりや文学仲間との交流などさまざまなエピソードを交えて紹介した。17章からなる書き下ろしの文章で、夫婦の心情を描くことに腐心したという。

 第2部は小論集。「啄木歌碑『こヽろざし得ぬ人人の…』漂泊の顛末記」「函館税務署と啄木」など、08年と10年に書いた論文3編を収録した。竹原さんは「26年という短い人生だったが、立ち止まることなく、絶えずスタイルを変え成長していった。啄木の魅力と当時の函館の空気を感じてもらえれば」と語った。

 四六判、295ページ、2000円。同館や函館山ロープウェイなどで取り扱っている。問い合わせは同館TEL0138・22・9014。

提供 - 函館新聞社


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