太平洋戦争の記憶伝える産業遺産 アーチ橋「蓬内橋」解体へ
update 2012/8/14 12:17
旧国鉄戸井線の遺構で、函館市の市道として使われていたアーチ橋「蓬内橋」(よもぎないばし)(瀬田来町)が、12月に解体される。老朽化に加え、津波が到達した際の避難路整備の観点から市が解体を決めた。太平洋戦争の記憶を現代に伝える産業遺産として貴重な存在だけに、関係者からは惜しむ声が上がっている。
蓬内橋はコンクリート製の三連橋。長さ36.8メートル、幅3.1メートルで、戸井地区に4カ所あるアーチ橋のうち、唯一市道として利用されてきた。
しかし、幅の狭さから消防車など大型自動車が通行できず、近くの高台には瀬田来町会館が存在する。昨年度、国道278号から高台につながる市道が開通した点も踏まえ、町会館への安全な避難路を確保する面から解体し、新しい橋に架け替える。
蓬内橋はすでに通行止めとしており、市土木部は「建設当時、鉄筋の代わりに竹が使われた可能性もある。旧戸井町時代から不安の声が寄せられており、安全面での不安が大きい」と説明する。
函館市史などによると、旧戸井線は1937(昭和12)年、津軽海峡防備のため、砲台までの軍需資材や兵員輸送を目的に着工。五稜郭と戸井を結ぶ約29`の単線鉄道として建設が進められたが、43(昭和18)年、戦局悪化で資材不足に陥り工事は中断。戦後も工事は再開されず、一度も使われることがなかったため「幻の鉄道」といわれる。
市土木部は「解体に際して材質を分析し、今後の参考にしたい」とする一方、元函館産業遺産研究会会長の富岡由夫さん(87)は「費用は掛かると思うが、ほかに道路を作るなどしてできれば残してほしい。仮に解体されても、ほかのアーチ橋は保存を進めてほしい」と話す。
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