イワガキ 奥尻の特産に 若手漁業者 養殖事業に本腰

update 2012/7/26 12:15


 【奥尻】奥尻町の若手漁業者が、まちの新しい特産にとイワガキの養殖試験に本腰を入れている。天然のイワガキは南方の暖流を好み、道内での生息は難しいとされていたが、奥尻近海に一定の割合で根付いていることを道総研栽培水産試験場(室蘭)がDNAを調べて突き止めた。養殖事業には奥尻地区水産技術普及指導所や桧山振興局も全面協力しており、漁業者らは「ウニやアワビと肩を並べる日が来ると信じながら、地道に活動を続けたい」と意気込んでいる。

 イワガキは主に本州・日本海側の温暖な海域に生息し、マガキに比べて大ぶりで味も濃厚だという。奥尻では、比較的深い水域に生息し、推定で2〜3万個の天然ものが数カ所に群生しているとみられているが、地元でも流通することのない「幻のカキ」とされている。

 奥尻には少なくとも4種類のカキがいる。見た目で種類を判断するのは難しいため、同試験場が昨秋、DNAを調べてイワガキであることを確認していた。道内で天然のイワガキがまとまって生息しているのが確認されたのは初めて。

 専門機関の“お墨付き”をもらったことで、道内唯一の産地に育てたい考え。ひやま漁協青年部奥尻支部(小浜洋介部長、14人)は昨夏、天然イワガキを採取。同試験場が10月、種苗をホタテ貝に付着させることに成功させた。今年5月には、同青年部が種苗付きのホタテ原盤で試験養殖に入った。本州では3年ほどで出荷となるが、奥尻の水温の低さなどを考慮すると「3年以上の時間が必要になるかもしれない。全てが初尽くしで試行錯誤しながら挑戦していく」(関係者)という。

 桧山振興局水産課によると、国内では1992年から島根県で養殖が始まっているが、流通量は少なく希少性がある。道内では冬場に流通することが多いマガキと違い、イワガキの旬は夏場で「地域振興を盛り上げる最高の存在」(同課)と期待する。今年4月1日には高橋はるみ知事が奥尻を視察した際、青年部メンバーを激励した。

 今月14、15の両日、町内で開かれた室津祭りでは、観光客や町民の声を参考にしようと、蒸しガキ大サイズ120個を販売した。

 今後は、養殖試験を通して得られたデータの収集・分析に入り、一定の道筋を見極めて販路拡大などのPRにも積極的に取り組みたい考え。

提供 - 函館新聞社


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