波響の掛け軸 一般公開…旧相馬邸、17日まで
update 2012/6/2 10:29
函館市元町33の旧相馬邸(東出伸司館長)は1日、開館2周年を記念し、松前藩の家老で画家の蠣崎波響(1764〜1826年)が江戸後期の漢詩人、菅茶山(1748〜1827年)の私塾を描いた掛け軸「廉塾図」の一般公開を始めた。波響研究者は「波響と茶山の親密な交流を物語る貴重な作品」と評し、これまで知られていなかった絵の存在に驚いている。
茶山は現在の広島県福山市に当たる神辺(かんなべ)を拠点に活動。平易で写実的な表現を得意とし、居宅に私塾「廉塾」を設けて多くの文人を輩出、「漢詩日本一」と伝えられていた。今回の絵は波響晩年の1821(文政4)年制作とされ、東出館長が2年前の秋、京都の美術商から買い取り、自宅で保管していた。
作品は縦40センチ、横70センチの風景画。田畑や水路、鮮やかな紅葉に囲まれた茶山の居宅と私塾が丁寧な筆遣いで描かれている。2人と親交のあった漢詩人、岡本花亭の絶句も上部に添えられ、素朴な赴きを感じさせている。
波響研究者によると、波響の作品は偽物も多いが、東出館長が保管している廉塾図は本物という。今年3月に鑑定した道立近代美術館主任学芸員、五十嵐聡美さんは「筆致や色塗り、構図などを総合的に見ても本物に間違いない。茶山に強く憧れていた波響の人となりが読み取れる。大切に保存してもらえれば」と話している。東出館長も「政財界の要人に加え、文化人との強い結び付きを裏付ける風景画。波響のそうした一面を感じ取ってもらえれば」と来場を呼び掛けている。
掛け軸は、小玉貞良の江差屏風などとともに17日まで展示。その後は広島県立歴史博物館に貸し出し、複製してもらうという。
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