減らぬ介護施設待機者、市内の特養など
update 2012/4/26 10:23
函館市の特別養護老人ホーム(特養)などの介護保険施設に入所を申し込んでいる待機者が減らない。市が昨年7月に行った調査によると待機者は2263人。2008年の介護保険3施設を対象にした調査と比べ238人増えている。市は本年度から3カ年で施設定員を計522人分増やす計画を示しているが、問題解決への道のりは遠い。
「今は介護形態が在宅に進んでいるが、人によって介護の仕方が違うので施設入所をもっと充実させてほしい」。市民団体の「函館認知症の人を支える会」の佐藤悠子会長は切実な表情で話す。
待機者減少を目指し、市内では特養や認知症高齢者グループホームといった介護保険施設の整備が進められてきた。特養は02年3月時点で9施設、定員783人だったのに対し、昨年度までに14施設、定員は1013人にまで増えた。グループホームは10年ほど前から急速に建てられ、昨年度までに40施設、定員が736人。10年前と比べて34施設、定員は593人分増えた。
しかし、入所を求める高齢者は減らない。函館市居宅介護支援事業所連絡協議会の中村清秋会長は「要介護度5あたりは病院に入ることが多いが、病院の床数も減っているため結局在宅に戻ってしまう」とこぼす。
また「実際は経済状況や医療度などを勘案し、要介護度3、4の人のほうが施設に入りやすい。1、2など状態がそれほど深刻ではない人が入ることは難しい」と話す。
一方、施設側も待機者の現状に対してジレンマを感じている。定員83人の特養「旭ヶ岡の家」(旭岡町78)は常に満床。20年ほど前に施設を増築して70人から83人に増やしたが、状況は変わっていない。同施設の待機者はおよそ400人いるという。
空きが出るのは入所者が亡くなったケースによることがほとんどで、同施設では昨年20人の入れ替わりがあったものの、年によって前後するため検討がつかないという。
後藤隆博施設長は「できることなら全員入れてあげたい。相談に来る人はみんな切羽詰まっていて、やり切れない思いもある」と打ち明ける。
柏木町で一人暮らしをしている坂爪幸さん(69)は、市内の施設に60歳から入居を申し込んでいる。ひざに痛みを抱えているなど将来に不安を抱いており、「一向に空きがなく、これからは施設を選ばずに申し込まないと入れないかも」。
市は本年度からの「第5期市介護保険事業計画」の中で、特養の定員を287人分新たに整備するほか、グループホームなども合わせて計522人分増やす。また介護をする家族の負担軽減を目指した「介護支援隊」導入を目指し、先進地の事例調査を本年度にする予定。厳しい財政状況の中、問題解決に向けた手立てを打っているものの、現状打開は不透明だ。
市保健福祉部は「今回の計画では近年にないほど施設の定員を増やす。少しでも待機者が減ってくれれば」としている。
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