温泉熱でイチゴ栽培…大一興業が恵山に施設

update 2012/4/12 13:15


 函館市恵山町の市有地で、市内の民間企業が温室イチゴの栽培に取り組んでいる。温泉熱と温暖な気候を生かした通年出荷を目指しており、「はこだて恋苺(こいいちご)」として早ければ5月末の初出荷を予定。市は市有地や温泉資源を貸し与えて支援しており、漁業が主力産業となっている恵山地域での、新たな地域振興策として期待が高まっている。

 建設資材販売の大一興業(函館市昭和2、大越信幸社長)が昨年12月、資本金3000万円で100%出資子会社「リュド・フレイズ」(小堤文郎社長)を設立して異業種に参入。温泉施設を伴う恵山市民センター近くの市有地(恵山町539)を活用して栽培に当たる。

 市は新たな特産品開発や雇用確保などの面から市有地と余った温泉資源を貸与。温度50度以上、毎分450リットルの豊富な湯量に加え、イチゴ栽培に適した気候と広大な平野が整っており、大越社長(42)は「冬場の日照が良い上、降雪も少ない好立地」と話す。

 栽培するのは「恋苺」と呼ばれる1粒数百円の高級品で、従来品種よりも糖度が高く、粒が大きいのが特徴。徳島県の新居バイオ花き研究所が開発し、3月に苗の供給を受けた。現地ですでに3000平方メートルの鉄骨温室(25メートル×120メートル)1棟を設置。初年度は6万7500株を栽培、66メートルの収穫と9800万円の売り上げを見込む。将来的には温室を6棟に増やした上で400トン、5億5000万円の売り上げを目指す。

 雇用は常勤2人、パート15人で始め、5年後には常勤13人、パート50人へと拡大を見込む。今後は独自の販売ルートの構築とともに、規格外品は冷凍イチゴとして大手スーパーとの取引を進める考え。体験農園の役割も兼ね、イチゴ狩りやアイスクリーム、スイーツ販売など観光事業も展開していく。

 市農林水産部は農業振興や未利用財産の活用、地域の雇用創出につながると歓迎し、「知名度が高まれば新たな特産品にもなる。販路拡大はもとより、市民に愛されるイチゴ作りを目指してほしい」と期待する。

 小堤社長(49)は札幌酒精工業(札幌)厚沢部工場の立ち上げや、同社の現地関連法人でイチゴの栽培に携わった経験があり、「道内のスーパーや地元スイーツ店を中心に販売し、観光資源の一つに加えていきたい」と意気込む。大越社長は「1年間でしっかりイチゴを供給し、地盤を固めて事業拡大につなげたい」と話している。

提供 - 函館新聞社


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