【震災1年】「津波」想定の避難訓練導入 函館市内の学校で防災対策強化進む

update 2012/3/5 11:17


 東日本大震災以降、学校でも防災対策に一層力を入れている。函館市内の避難訓練はこれまで、地震や火災を想定した内容がほとんどだったが、多くの学校で「津波」が加わった。中でも海沿いに位置する学校は、高台への避難方法を確認するようになった。

 避難訓練は火災と地震については、すべての学校で実施している。道教委の調べによると、函館市内の小中学校で昨年度行われた津波の訓練はわずかに小学校1校、中学校2校。しかし震災以降は小学校で25校、中学校は19校で実施するようになった。

 津波の想定は主に海からの距離が近いところや、海抜が低い学校で導入した。南茅部地区では昨年11月、磨光小と尾札部保育園が初めて合同で行い、高さ10メートルの津波を想定して同園から標高48メートルの位置にある同校までの約600メートルを徒歩で避難した。

 また恵山中では、校舎裏にある山道を整備し、高台へつながる避難路を形成。6月の訓練では全校生徒が通路を走って避難した。10月には中部小で緊急地震速報を使った避難訓練が行われた。

 恵山中の伊藤勝校長は「10月は津波を想定した避難訓練は行わなかったが、いつ地震が起こるか分からないので事前に知らせず抜き打ちで実施した。子どもたちの防災に対する意識は高まっていると感じる」と手応えを語る。

 一方、子どもと同じ災害弱者であり、体の不自由な高齢者が入所する福祉施設では津波に対する避難訓練はほとんど行われていない。海からの距離が近い施設は震災時、津波が建物まで達していなかったことや、足の不自由な利用者にとって屋外避難は危険を伴うからだ。

 吉川町3の特別養護老人ホーム函館はくあい園は「震災当日は2階より上に避難した。ハザードマップは手元にあるが、現実的に避難場所の小学校に行くのは難しい」と話す。

 学校の防災対策は避難訓練のほか、ハード面でも進んでいる。市は2008年度から本格的に進めてきた市内公立学校の耐震診断調査を新年度中に完了することを決めた。

 市教委によると、市の公立学校で耐震基準を満たす校舎・体育館などの割合(耐震化率)は、昨年4月1日現在で小中学校52・7%。同期比の全道平均69%、全国平均80・3%を大きく下回っている。当初は16年度までをめどとしていたが、耐震状況を早期に把握しようと前倒しした。

 市教委施設課は「函館の学校は歴史がある上、古い校舎が多い。改修して効果的な防災につながれば」と期待する。

提供 - 函館新聞社


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