被災生徒の“強い心”歌に 石巻の中学生の作文からう〜みんさんが作詞作曲
update 2012/1/22 10:22
「あなたの優しさで僕らは変わった 失っただけじゃなかった 哀しみを乗り越える勇気をもらった」―。函館出身の歌手う〜みさんが宮城県石巻市の中学生が書いた作文をもとに作詞、作曲した「現在〜いま〜」を制作した。CDアルバム「なとわ〜あなたへ」に収録し、2月15日に発売する。昨年4月以降、精力的に足を運んだ東日本大震災の被災3県で出会ったすべての人たちに届ける一曲だ。
震災直後に広がった自粛ムードの中、「黙って待っている間にも苦しんでいる人たちはいる」と、昨年4月、音楽療法を学ぶために渡米。「音楽はすべての人の生活レベルを向上させることができる」との言葉を胸に、同18日の福島県相馬市を皮切りに被災地での活動を始めた。
目の前に広がる壊滅的な光景に、テレビの前で流し続けた涙さえも出なかった。各避難所で開いた童謡を中心としたコンサート。「こんな時に歌なんてと思われるかも知れない」との不安は杞憂(きゆう)に終わった。「ありがとう」の声が広がった。「歌で励まそうという気持ちだけなら、被災者の前で歌うことはできなかった。音楽の力で、みんなの底力を目覚めさせるという思いを信じていた」。
「現在〜いま〜」を作るきっかけとなった石巻市立万石浦(まんごくうら)中学校を訪れたのは6月。犠牲となった生徒はいなかったが親族や家屋を失った生徒も多く、体育館は避難所となっていた。
生徒と一緒に食べた質素な給食。育ち盛りの子どもたちが「僕らより苦しんでいる人がいる」と我慢を受け入れていた。「一緒に歌を作ろう」と呼び掛け、作文を募った。約250人の生徒たちの言葉には、絶望の中で、一度は折れてしまった心、自分たちの街で活動する自衛隊やボランティアへの感謝、前向きに生きようとする希望が込められていた。生徒全員の気持ちを詩に乗せた。
いま、あなたに
心からありがとう
あの日の悲しみは
消えないけれど
きっと乗り越えて
笑ってみせる
8月には同市内で、函館の市民団体「シーニックdeナイト実行委員会」(折谷久美子代表)が主催したキャンドルイベントに出演。できあがったばかりのこの曲を披露した。折谷さんは「希望を与えてくれるう〜みさんの歌声がキャンドルのあかりと重なった」とし、う〜みさんは「函館の人たちと一緒にできたことがうれしかった」と話す。
10月に開かれた同校の文化祭では、生徒と一緒に歌い上げた。どの顔もきらきらと輝いていた。同校の山田晴彦教頭は「表現が得意でない子が多いが、震災後も秘めた気持ちを持っていった。文化祭のテーマ曲として練習し、当日は子どもたちも保護者も感動とうれしさが広がっていた」と振り返る。
今年も被災地でのコンサート活動を続ける。近く、岩手県南三陸町で出会った人たちの作文をまとめた本を出版するほか、2月発売のCDの売り上げの一部で同校に部活用品を寄贈する予定。
う〜みさんは「どんな状況でも夢はかなう。将来復興を支える子どもたちに、この時の体験がどこかで役立ててもらえたら。被災地で知ったことは自分の命は自分でまもるということ。この歌と一緒にそのことを伝え続けたい」と話している。
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