道産苗木100%でブナ林再生へ
update 2011/12/15 11:59
道内では渡島半島でしか見られないブナ林を、道産苗木100%で再生しようという試みが進んでいる。道総研林業試験場道南支場、渡島総合振興局、道山林種苗協同組合渡島地区種苗協議会が、植裁用苗木を生産するためにブナの道産種子を大量に集める態勢をつくり、今年1年目の採種をした。広葉樹で種子産地を地元に限る例は全国でも珍しく、成功すれば都府県の広葉樹林再生のモデルとなりそうだ。
九州から北海道まで広域に分布するブナ林は後志管内黒松内町が北限とされ、道南全域に自生している。まきや枕木、フローリング材などに使われ、1950年以降伐採が進み、山は衰退の一途。ブナ植裁による自然再生が課題となっている。
ブナには地域間変異が存在し、生態特性が大きく違う特徴がある。例えば、北海道では本州産はうまく育たなかったり、遺伝的な不適合を起こしたりする恐れがある。このため、苗木はもともと地域にあった母樹集団から生産することが望ましいが、道産種子は2002年以降まとまった量が取れず、足りない分は他県産の流入が続いていた。広葉樹はそもそも種子の持ち込み、持ち出しの規制がないことも背景にある。
道産種子による苗木生産の機運が高まったことを受け、苗木生産者が容易に十分な量の道産種子を入手できるよう環境整備をすることになった。
問題はブナが豊凶の振れ幅が大きい上、豊作の間隔が5年以上と長いこと。また、地域間で作柄が必ずしも同調しないことだ。これらに対応するため、いつどこで種子がなるかの情報を3者共同で収集・共有し、確実な種子採取につなげることにした。
その大きな役割を果たすのが道南支場が97年から始めた豊凶予測だ。せたな町北桧山区、黒松内町、乙部町、上ノ国町、函館市恵山、同市赤川の計6カ所で実施するブナの開花結実状況のモニタリングと枝の芽むき調査に基づくもので、前年の冬(12月〜翌年2月)までに翌年の各地点の豊作、平年作、凶作を予測する。3者はこれを利用し、種子を取れる可能性があれば、8月ごろ着果確認。その結果、可能性が高いと判断した場合、網を設置し10月いっぱい採種をする。
今年の採種量は約20キロで、この種子から苗木5万〜6万本(1年分に相当)を生産。種子が大量に取れれば、生産者の所得増にもつながる。
同支場の阿部友幸研究主任は「種子を道産に限るのは、苗木生産者の大きな負担となる。その代わりに生産者が容易に種子を採取できるようなインセンティブ(公的機関による情報提供)を作り出すことで対応するようにした」と話す。
阿部さんによると、種子が多くできる条件は、花がたくさん咲くことと、前年に花が咲いていないこと。また、花が咲かない年があると、その年は花だけを食べる虫は増えることができないので、翌年は虫害が少なく種子ができやすくなるという。
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