給与削減交渉あすがヤマ場、市と組合で平行線続く
update 2011/11/16 10:16
函館市が今月1日、市役所労働組合連合会(市労連)に提案した、人事・給与制度の見直しに関する労使交渉は、市の財政状況に対する見解の隔たりから平行線の状態が続いている。市は12月からの実施に向け、今月末に臨時市議会を招集する上で17日をタイムリミットとしているが、10%削減の根拠や退職手当債の発行をめぐる認識の違いから、同日までの妥結は困難な情勢で、工藤寿樹市長の今後の判断に注目が集まる。
市が組合側に提案しているのは、本年度の人事院勧告に基づいて給与を改定したうえでの給与の10%独自減額、退職手当の10%減額(来年度以降20%)、持ち家にかかる住居手当の廃止、人事評価制度の来年度本格導入―など6項目。
地方交付税の大幅な減少などから本年度35億円、来年度52億円の財源不足が生じると見越しての内容で、12月から実施するには今月中に臨時市議会を招集、関係条例の改正を提案して議決を得る必要がある。市は「臨時会開催までの作業を考えると、17日がタイムリミット」(総務部)とし、今月1日を皮切りに、これまで計3回交渉が行われている。市側が要望した交渉公開は組合側が反対して断念したが、話し合いの内容はホームページで公開している。
これまでの交渉では、主に削減額を10%とする根拠と、工藤市長が22億円から10億円に圧縮して借りるとした退職手当債に対し、双方の主張がかみ合っていない。
市は3回目の交渉(11日)で「財政状況や他都市の状況、市内民間の給与水準よりも高いことを考え合わせた。内部努力が必要で、職員の生活を勘案すると10%がぎりぎりのライン」と説明。これに組合側は「民間の状況を調査していない状態で高いと言うのは感覚的で、疑問に感じる。事務事業の見直しを徹底して進めるべき」と反発を強める。
退職手当債については、2度目の交渉(7日)で組合側が「赤字債だから発行しないのか」とただしたのに対し、市側は「財政的手法として一時的にしのぐ点と、将来に受益のない赤字債だから借りないという2つの考え方がある」と回答。借りてしのぐか、内部努力で補うか。赤字をカバーするための方法論もまた、異なる。
財政に対する現状認識の違いはこれだけではない。組合側は、標準財政規模(市税と地方交付税)に対する借金返済の割合を示す実質公債費比率が、昨年度決算ベースで8・2%と、「全道の市の中でも低い状態」と、財政は健全状態にあると主張。一方の市側は、一般財源のうちどの程度を税収で賄えるかを示す財政力指数が昨年度で0・462と、1998年度のピーク時(0・561)から大幅に減少している点を重視。「将来負担(実質公債費比率)が少ないにもかかわらず財源不足が出ている。今から手を打たなくては」(市財政課)との考えが根底にある。
実質的な交渉期間は約3週間と短い。初回の交渉に出席した工藤市長は「内容や日程は決して決まり切ったものではない。基本的には労使合意が前提」としながらも「その時点(=17日)までに煮詰まっていなければ、一定の判断をすることになる」と含みを持たせている。
17日に交渉が行われる予定だが、市労連の長谷川義樹執行委員長は「提案内容に対する見解は出しておらず、現時点では考え方をぶつけている段階。市が強行する以外に11月臨時会の開催はあり得ない」とけん制する。市の上戸慶一総務部長は「互いに財政状況が厳しいという認識はある。今後の交渉で、どこまでやり取りができるかに尽きる」と話す。
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