野田首相のTPP交渉参加方針表明 道南一次産業 猛反発

update 2011/11/12 10:35


 野田佳彦首相は11日に行った記者会見で、環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加方針を正式表明した。関税の原則撤廃を目指す協定内容のため、道南の反応は立場によりさまざま。農林水産業界は一様に猛反発し、十分な説明がないままの判断を疑問視する声も挙がった。一方で商工業者は「国益になる」として賛成の姿勢を示している。

 菅政権時代に浮上したTPPへの「参加検討」の段階から断固反対を訴えてきたJAグループ。8日に東京で開かれた6000人規模の「TPPから日本の食と暮らし・いのちを守る国民集会」にも参加したJA新はこだての畠山良一組合長は「大変遺憾だ。引き続き反対運動をしていく。関税品目を作る産地がみんな野菜を作るようになったら供給過剰となり、道南の産地も打撃を受ける」と危惧(きぐ)する。

 漁業関係でも、道漁連の一員として交渉参加しないことを政府に求めてきた南かやべ漁協の鎌田光夫組合長が「プラス面とマイナス面を分かりやすく説明する責任があり、マイナス面については国がどうカバーするのかを目に見える形で示さなければ。農林水産業は国民の命、生活を守るもの。こんな世論を無視するような政治はあり得ない」とした。

 函館市の工藤寿樹市長は「拙速にアメリカの顔色をうかがって交渉に参加するのはいかがなものか。アメリカの経済が今もグローバル・スタンダードと言えるのか疑問」と指摘。「農業や水産業、医療などの対策をきちんと考え示し、反対している人々の理解を得た上で参加すべき」と政府に明確な説明や対策を求める。

 参加となると医療や公的サービスが自由化され、全額自己負担となる混合診療や医療の外国資本参入が進む可能性がある。医療サービスに要する費用の高騰や貧富による医療格差が生まれるとして、日本医師会をはじめ各地の医師会は反対を表明。函館市医師会の伊藤丈雄会長は「日本が国民皆保険制度に基づいて格差なく平等に提供してきた安全な医療が崩壊する恐れがある。国民的な合意が得られない中での参加表明にはとうてい賛成できない」と語気を強める。

 この一方で商工業者からは「より自由な競争ができる」と参加を支持する声が相次いでいる。函館商工会議所の松本栄一会頭は「貿易の障壁がなくなれば利益を受けるのは消費者、ひいては国益になる」として参加に賛成の姿勢を明確にする。さらに「関税がなくなると公正な競争が起きるためメリットが大きい」とみる。

 桧山町村会は、関税撤廃で影響が予想される、農漁業を中心とする一次産業への対策が明示されないままでの交渉参加表明には反対の立場。国、道、道内選出国会議員などへの要請活動の際にも、十分に配慮するよう求めてきた。農業が基幹産業の厚沢部町や今金町では反発が大きいが、漁業分野ではナマコやスケトウダラなど管内産水産物の積極的な輸出が漁業経営の向上に貢献している事情もあり、交渉の行方を見守る。同町村会の寺島光一郎会長(乙部町長)は「国は十分な情報を国民に開示しながら議論を進め、何が国民の利益に合致するかという視点で議論することが必要だ」とした。

提供 - 函館新聞社


前のページにもどる  ニュースをもっと読む


ご注意:
●掲載している各種情報は、著作権者の権利を侵さないよう配慮の上掲載されるか、又は、各情報提供元の承諾の元に掲載されています。情報の閲覧及び利用については「免責事項」をよくお読み頂いた上で、承諾の上行って下さい。
●掲載中の情報の中には現在有効ではない情報が含まれる場合があります。内容についてはよくご確認下さい。

ページ先頭へ

e-HAKODATE .com
e-HAKODATEは、函館市道南の地域情報や函館地図、旅行観光情報、検索エンジンなど、函館道南のための地域ポータルサイトです