TPP参加結論先送りも…農漁業者、募る危機感
update 2011/11/11 10:22
野田佳彦首相は10日、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加の結論を11日に先送りしたが、道南の一次産業の現場では農家を中心に「関税撤廃を前提としたTPPに参加すれば日本の一次産業は壊滅する」と危機感が強い。農漁家からは国への怒りや先行き不安の声が高まっている。
「10キロ数百円の外国産米が日本に入ってきたら、とてもやっていけない」。北斗市水稲採種組合(13戸、85ヘクタール)の小山内(おさない)吉美組合長(60)=同市開発=は表情を曇らせる。
小山内さんは採種米8f、食用米2fに加え、施設園芸(トマト、イチゴ)も手掛ける。現在778%の関税で守られているコメは、撤廃されればコメ農家の経営は立ち行かなくなり「種もみ生産もいらなくなる」(小山内さん)。息子(28)が後継者として就農、ようやく経営も軌道に乗ってきた。「結論が1日遅れたからと言って、参加表明に対する農家の不安や怒りは変わらない。われわれはあと十年もすれば引退するが、息子たちにしわ寄せがくるのはやりきれない」
コメ専業農家は一層深刻だ。同市水稲直播推進協議会(23戸)の白戸昭司会長(52)=同市開発=は「コメ農家がつぶれれば、地域の崩壊につながる」と危機感が大きい。白戸さんは水稲15ヘクタールを作るコメ専業。3.5ヘクタールで作る直播は従来の移植栽培に比べ、苗作りなどの春作業が軽減されるため、省力化、低コスト化が図られる上、付加価値の高いブランド米として有利販売する。それでも白戸さんは「安い外国産米には太刀打ちできない。農業はある程度、国に守ってもらわないと。担い手への所得補償を手厚くするなどの支援策をきちんと打ち出すべきだ」と要望する。
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天然・養殖コンブ漁を主体に発展してきた函館市旧4町村地域は「地元経済を根底から覆す問題になるのでは」と多くの漁師がTPP参加を警戒する。
同市戸井地区の70代夫婦は「海外ものが出回れば、初めは売れるかもしれないが、いずれは味で国産が見直される時が来る。この話を加工業者とも最近したばかり。TPP参加で廃業する人が増える一方で、国産が見直されたときに、どれだけ生産者が踏ん張っていられるかが心配」と危惧(きぐ)する。
恵山地区のイカ釣り漁師の男性(31)は「魚は、もうとっくに外国から頻繁に入っているので、TPPがどうのこうのという話じゃない。現在の一次産業の衰えに目を向け、発展につなげるための知恵が政府に求められている」と訴える。
椴法華地区の男性(67)は「われわれが反対反対と言っても、総理が決めたことであれば受け入れるしかない。生活は、ホッケの刺し網と少しの養殖コンブが頼りで、TPPの影響で先行き不安が大きい」と語る。
南茅部地区でコンブ、ウニ、ナマコ採取で生計を立てる女性(74)は「主婦の立場だと、海外の安い商品やサービスは何より。水産物では、消費者は品質や安全面で優れた国産を選ぶと思うので、TPP参加への心配は少ない。国が、いつまでも反対姿勢で世界から置き去りにされるのも困る」と容認の考えを示す。
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