江差線バス転換 清川口駅で売店営む桶谷さん「お客さんがいる限り営業」

update 2011/11/3 11:49


 【北斗】北海道新幹線の開業に伴い、JR北海道から経営分離される江差線五稜郭―木古内間(37・8キロ)に関し、道がバス転換する方針を示したことについて、沿線住民から不安の声が上がっている。北斗市内のJR清川口駅で、沿線唯一の売店を営む桶谷フミさん(86)もその一人。「函館との行き来が不便になってしまう。できれば残してほしい」と存続を願いながら、「今まで1日も休まずに営業を続けてきた。お客さんがいる限り、シャッターを開け続けたい」と話す。

 「お買い物に行ってきたのかい。ご苦労さまです」。小さな駅に列車が到着すると、桶谷さんは降りてきた顔なじみの客に優しく声をかけた。待合室の中にある売店はオレンジ色の外観が目を引き、菓子やたばこが置いてある。店の横にはピンク色の公衆電話。「タクシーを呼ぶ人が多いのよ」と笑う。

 桶谷さんが店で働きだしたのは10年以上前のこと。以前は5、6人が交代で働いていたが、最後に残り、以前の経営者から営業許可を引き継いだ。

 自身も江差線の利用客だ。起床は毎朝5時。函館市昭和の自宅から五稜郭駅まで40分ほど歩き、午前6時28分に清川口駅に到着する一番列車に乗ってくる。店では函館方面への切符も売っており、通勤、通学、通院客で混雑する朝が最も忙しい。1日いっぱい店に立ち、夕方の列車で帰宅する毎日だ。

 道のバス転換の方針が分かってから、自身も乗客も、この話題で持ちきりだという。「たまたま帰りの汽車に遅れてバスに乗ったこともあるけれど、時間かかるし運賃も高い。汽車ならあっという間に着いちゃうし、残してほしい」。しかし、年々利用客が減っていく様子は、店の中からつぶさに感じ取っていた。「昔は朝の列車に学生がワーッと乗ってきた。今は教室が空いてるって聞くしね」

 86歳になった今も、一人で休むことなく店に立ち続ける。後継者はいない。「盆も正月もあったもんでない。だけど、お客さんはいつも開いてると思って来てくれる。どんなことがあっても休みません」。そんな姿に、常連客の女性(54)は「お母さんのような存在。休んでいるのを見たことがないし、尊敬している」と慕う。

 2015年度には北海道新幹線が開業するが、江差線の旅客輸送がなくなれば、店をたたまなくてはならない。「そのころまで生きているかはわからないけど、列車がなくなったときにお客さんがどうなるかが心配だよ」。自身のことよりも、利用客のこれからを気にかけている。

提供 - 函館新聞社


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