情報発信 市民を意識 工藤市長就任から半年

update 2011/10/31 22:47


 函館市の工藤寿樹市長(61)は就任から半年を迎えた。「改革と挑戦」を旗印に前例や既成概念にとらわれない市政運営を進めるとともに、各種の事例に深く踏み込んだ発言も多く、情報発信を重視する姿勢がうかがえる一方で、論議を呼ぶ場面も少なくない。6カ月が経過した中でこれまでの定例会見や市議会などでの発言から印象に残るものをピックアップし、これまでを振り返る。

 「今まで通りの仕事をしようとするなら、市役所を去ってほしい。どうすれば函館を元気づけられるか、自分の問題として考えてほしい」(4月27日、初登庁時の訓示) 「公務員時代の工藤とは変わった。1年数カ月、市民の間でいろいろ話を聞きながら、物の考え方も変わってきた」(4月27日、市長就任会見)

 工藤市長は市政運営を担うに当たって以前との違いを強調しながら、自身のスタンスを表現してきた。西尾正範前市長が取り組んだ施策を次々と転換、コンベンション機能を併設した新体育館「函館アリーナ」の整備や、財政再建推進会議など市民参加型の会合を相次いで立ち上げた。

 選挙戦で掲げた92項目の政策のうち、実現に結び付けたものは各種会議の設置をはじめ、商店街への交付金制度創設、事業仕分けの実施など半年間だけで10項目以上。展開の速さに「政策のイメージをつかむのに苦労している。細かい指示も増えて、ついていくのが大変」(ある幹部)と戸惑いもみられる。

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 「周辺市町村の同意を得ずに進めるなら、場合によっては市が原告になってまで司法手段もあり得る。憲法で保障された市民の生存権を脅かすことになりかねない」(10月19日、市民団体との懇談)

 青森県大間町で建設中の大間原子力発電所(現在は建設中断中)への対応をめぐっては、一貫して無期限凍結を主張。8月30日には現地視察を行って行動力を示した。市民団体との懇談では、前述の言葉でさらに一歩踏み込み、「力強く思う」(中宮安一七飯町長)と、周辺自治体からの支持も得た。ただ、自治体が原告となって生存権を提起した例はなく、原告としての適性は不透明だ。

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 「どんな企業でも、赤字になった時に手を付けるのはリストラと人の削減。市役所だけが例外ではない」(9月14日、市議会本会議)

 「市民がおにぎりを食べている時に、公務員が別室で幕の内弁当を食べている状況は直したい」(10月18日、定例記者会見)

 本年度35億円、来年度に52億円の赤字が見込まれる厳しい財政状況を受け、10月18日には職員給与の10%削減、退職手当の20%(本年度は10%)削減を柱とする行財政改革案を発表。「道内の他の自治体では3〜5%が主だが、財政を考えるとその程度ではカバーできない」というのが提案の根底にある。

 6日後の24日には市労働組合連合会(市労連)と、交渉過程の公開を求めて話し合いのテーブルについたが、組合からは「就任時など、もっと前から説明があってもよかったのでは」「職員が悪者だというのか」と批判を受けた。

 市民の行政参加を積極的に行い、情報公開を進める姿勢への評価は高い。だが「あまり独善的にならなければいいのだが」(別の幹部)と、庁内には施策展開のあり方や意識の違いなど、ひずみも見え隠れする。人口減少時代に経済再生を目指すだけに、今後のかじ取りは厳しさを増す。市民や職員との意識や価値観の共有が課題となっている。

提供 - 函館新聞社


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