水産技術2年連続表彰
update 2011/10/10 10:48
函館地域産業振興財団(函館市桔梗町)の吉岡武也主任研究員(48)が「スルメイカ(マイカ)の高鮮度保持と流通技術の開発」とする研究で、日本水産学会(東京)の2010年度水産学技術賞を受賞した。函館名物のイカを首都圏に鮮度を保ちながら出荷できる技術で、水産業の振興に貢献したと評価された。09年度にも、吉野博之企画事業部長(53)が同賞を受けており、同財団は2年連続の快挙を喜んでいる。
吉岡さんは、イカの活じめ技術を開発。生きているイカの外套(がいとう)神経(脳と胴体をつなぐ)2本を切断すると、脳からの刺激が伝わらなくなるため動けなくなる。イカが暴れて死ぬと鮮度が落ちるため、この方法により暴れずに動けなくすることが可能に。活じめ後も組織として身は生きており、組織が生きていくためには呼吸が必要。呼吸は酸素を吸収し炭酸ガスを出す。そこで、酸素を封入したパックに入れる方法を考案。輸送時は、従来の発泡下氷だとイカの表面温度は0度になるが、5度の方が鮮度が保たれることを見いだした。組織は呼吸しながら生き続けるため、0度に下げると代謝が落ちる。それより高い温度(5度)の方が組織が生きている状態が持続し、活魚に近い品質を保つことに成功した。
鮮魚を扱う古清商店(同市豊川町、古伏脇隆二社長)が2005年に「函館活〆するめいか」として商品化、東京・築地市場へ出荷している。市場価格は、発泡下氷が1匹あたり80〜90円なのに対し、活〆が同450〜500円。鮮度にこだわるすし店や料理店から引き合いが強いという。吉岡さんは「函館にとってイカは大事な水産物。新鮮さを売りにしたイカが多く出回れば、函館の水産業がもっと潤うのでは」と話す。
吉野さんは「鉛フリー船釣り用オモリの開発」と題し、山本勝太郎北大名誉教授、フジワラ(北斗市)の藤原鉄弥社長と共同研究した。従来の釣り用重りは鉛が原料だが、人体には有害。そこで、鉛を使わず、環境に優しい釣り用重りを開発した。フジワラが05年に商品化した「ワンダーΙ」で、4枚の羽根が付くのが特徴。素材は鋳鉄(ちゅうてつ)。鉛製重りは水中で100メートル着底するのに38・4秒かかるのに対し、ワンダーは27秒。比重(水に比べ何倍重いかを示す)は鉛が11なのに対し、鋳鉄は7・2。比重のハンディも乗り越え、落下ポイントに速く、真っすぐに沈む理想≠フ重りを実用化した。
同社はイカ釣り用重り「鉄矢」も商品化しており、ワンダーと合わせてこれまでに30万本以上売ったという。
同賞は、水産学が直面する課題に真摯(しんし)に取り組んだ研究成果として優れた業績を上げたものを表彰。吉岡さんは当初、3月の同学会春季大会で受賞する予定だったが、東日本大震災の影響で中止となり、9月30日に長崎市で開催された秋季大会で授与された。
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