エゾシカ農業被害深刻 小安町や豊原町などで
update 2011/10/9 12:11
函館市の小安町方面で、エゾシカによる農業被害が深刻化している。市や渡島総合振興局によると、被害額・捕獲頭数はともに増加傾向にあるという。農家は捕獲用にわなを仕掛けるが「ここ数年で頭数が爆発的に増えている可能性があり、甚大な被害に対策が追い付かない」と頭を抱えている。
「何とかならないものか」。函館市亀田中野町の農家佐藤亘さん(47)はため息をつく。小安町、豊原町でジャガイモやニンジン、キャベツなど野菜4種類を栽培するが、5年前から作物を食い荒らされたり、踏みつけられたりといった被害が急増。被害額は毎年約300万円に上り、10年前の約10倍に増えたという。対策として、畑の四方に高さ約1・5メートルのネットを張り巡らせるが「簡単に飛び越え、荒らされてしまう」。
市や農協など関係機関でつくる函館市鳥獣被害防止対策協議会は、被害農家に狩猟免許の取得を奨励するとともに、今年から「くくりわな」を1人5台まで貸与している。わなで狩猟できるのは10月24日までの半年間で、2年前に免許を取った佐藤さんは「効果は広大な農地のほんの一部分だけ。自前のわなは1台1万円ほどかかるし負担は大きい」と話す。
小安町に6・5ヘクタールの畑を持つ東山1の農家金沢賢昌さん(52)も、5年前から6ヘクタールで毎年100万円近い被害に遭い、09、10年はジャガイモの栽培を断念した。今年もニンジン畑を中心に被害は約100万円に上る見通しで、金沢さんは「道東の被害が注目されがちだが、函館の被害も小さくない」と指摘する。
函館市農務課によると、2010年度の被害額は市全域で2731万円で、07年度の約4倍に達する。渡島総合振興局によると、10年度の管内では全体で3100万円。函館の被害が88%を占め、知内や八雲がこれに続くという。捕獲頭数も、毎年秋から始まる可猟期間分に加え、自治体が必要に応じてハンターに出動要請する分も含めると、10年度は750頭となり、08年度の約1・7倍に膨らんでいる。
狩猟免許を持つ農家に加え、道猟友会函館支部所属の地元のハンターも畑にわなを設置している。金沢さんら農家は「こうした人たちの協力もとても大きい。正直、農家の力だけでは限界があるから」と話す。
JA函館市亀田は、被害拡大の防止を目的に鳥獣被害者の会を9月末に立ち上げた。農家同士が情報を共有し合い、関係機関へ対策を要望していく考えで、営農相談課は「個々の農家では対処できない苦しい現状にある。被害農家の1つの受け皿になれば」と期待。市農務課も「対策協議会としても、現状をよく把握しながら農家のサポートを続けたい」としている。
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