厳しい、拙速 焼き肉店困惑…生食用牛肉きょうから新基準
update 2011/10/1 13:08
4月に発覚した焼き肉チェーン店の集団食中毒事件を受け、厚生労働省が策定したユッケなど生食用牛肉の新基準が1日から施行される。業者に肉の表面の加熱を義務付け、罰則も新設する厳しい内容。9月29日には渡島管内の牛肉の処理業者や飲食店向けの講習会が開かれたが、焼き肉店関係者からは戸惑いや憤りの声も上がっている。
「国の責任逃れでしかなく、現実的には店に『もう売るな』と言っているようなもの。日本の食文化を殺す気か」。29日に市立函館保健所で開かれた生食用食肉取扱者講習会。受講した森町内の焼き肉店の男性店主(36)は、こう吐き捨てて会場を後にした。
これまでの基準では、表面を削る「トリミング」をすれば生食用として提供でき、罰則規定もなかった。新基準では表面から1a以上を60度で2分以上加熱殺菌することや、加工や調理のための専用の設備や器具を備えることなどを定める。違反者には営業停止などの行政処分もある。
生食用の食肉を加工するには講習会の受講などが必要だが、今回、市立函館、渡島、八雲の各保健所が合同で開いた講習会は新基準の施行からわずか2日前。説明に当たる担当者ですら厚労省から最終的な説明を受けたのが今月中旬で、「日程的にタイト過ぎる」(渡島保健所)との声も漏れる。
約3時間の講習会には加工業者や飲食店など約60人が参加。このうち函館市内を管轄する市立函館保健所は計260社以上に案内したが、30社余りしか集まらず、同保健所は「新基準の内容があまりに厳しく、準備期間も短いため、生食肉の提供を断念した業者も多いのでは」とみる。
講習会で同保健所の担当者は、真空パックで密封したブロック肉をお湯につけて加熱したり、生食が食中毒のリスクがある旨を表示したりする加工や表示の新基準を説明し、「『今まで大丈夫だった』は通用しない」と強調。加工には専用設備が必要となるため「飲食店は加熱加工済みの肉を仕入れてほしい」と求めた。
一方、飲食店らの反発は大きい。新基準の対象はユッケと牛たたき、牛刺しなど。市内でホルモン焼き店を経営する男性は(44)は「提供してきた牛のたたきはもう出せない。設備投資だけなく、肉の仕入れコストも上がれば採算が合わない」とあきらめ顔で、「今後、レバーなど内臓系にも規制が広がれば死活問題」と頭を抱える。
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