東京理科大 ホタテ養殖に貢献…きょう部門発足

update 2011/10/1 13:07


 【長万部】長万部町富野に基礎工学部長万部キャンパスがある東京理科大(藤嶋昭学長)が、地域の活性化に向けて動き始めた。1日に、地域密着型の研究組織「長万部地域社会研究部門」が発足。町の基幹産業である養殖ホタテの基礎研究、ザラボヤ対策やウロ(中腸腺)の処理問題、貝殻の有効利用に取り組むほか、人口減や少子高齢化といった町が抱える課題解決も目指す。大学の知的資源を生かし、自然、社会の両科学分野で地域貢献し町の再生を図る。

 部門は共通テーマを設定し学部、学科を超えて共同研究を行う。同部門は同学部長の友岡康弘教授(60)=発生学、発生工学=を部門長とし、研究者19人で構成。設置期間は2016年9月まで。

 長万部キャンパスは1987年に開設、1年生が全寮制で学び、2年生から野田キャンパス(千葉県)に移行する。現在、長万部には約320人の学生がいる。同町の人口は80年には1万1164人だったのに対し、10年には6429人まで減少、さらに65歳以上の割合も80年の約10%から10年には約35%に拡大。大学側はキャンパスと共存し、学生にとっても「第二の故郷」と呼ぶほど愛着のある町の衰退は、キャンパスの存続にも関わる重要な問題と捉え、部門設立により少子高齢化に歯止めを掛け、活性化を図る必要があると判断した。

 自然科学分野では、これまであまり行われていない分子生物学の手法を用いたホタテ稚貝の発生メカニズムを研究する。また、養殖筏(いかだ)の材質や構造を調査し、ホヤや貝類の付着しにくい筏の開発を目指すほか、海中で安定し、室温で容易に安く分解できる耳釣りフックの開発を検討する。ウロに含まれるカドミウムを適正処理する技術開発も目指す。貝殻利用では吸着特性に着目、機能性材料として実用化を進める。

 社会科学分野では、町の実態調査を行い、将来の活性化策を模索する。同キャンパスで学生生活を送った卒業生約5000人のネットワークをつくり、長万部のセールスマン≠ニして活動してもらう。

 友岡教授は「地方の疲弊は政治や経済の問題ではなく、そこにある大学の問題であると捉えるべきだ。これまで教員は各分野で研究、教育をしていれば十分だったが、今後は専門分野を統合し社会問題の解決策を見いだすことが必要」と話す。

 白井捷一町長は「部門の発足は、噴火湾4町のホタテ養殖漁業に大きなプラスになる。町としてもできる限り協力したい」と期待を込める。

提供 - 函館新聞社


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