海藻がバイオポリマーに、道立工技センターなど開発

update 2011/9/14 12:34


大量発生する厄介者のアオサなどの海藻から、バイオポリマーの一つである「ポリ乳酸」と「バクテリアセルロース(BC)」を作り出す技術を、道立工業技術センター(函館市桔梗町)や函館工業高等専門学校(函館高専、同市戸倉町)などの研究グループが確立した。ポリ乳酸はアオサのほか、チガイソ、コンブの商品にならない部分からも生成可能で、未利用海藻を有効活用するユニークな技術として注目される。

 文部科学省の事業「函館マリンバイオクラスター」(2009〜13年度)の一環。研究グループは同センター材料技術科の小林孝紀研究主査、函館高専の清野晃之准教授のほか、北大、東京工業大で構成、未利用海藻の有効活用を研究の主眼とした。

 緑藻類のアオサは、北京五輪のボート競技会場で発生するなど、世界的に異常増殖が問題化。夏の暑い時期には、道南の海岸でも発生が見られるが、食用には向かない。褐藻類のチガイソは道南近海にも生息、養殖コンブと同じ場所に生えて生育のじゃまをするため、駆除が必要。コンブは商品化の際に大きさを整えるなどして切り落とされる部分がある。

 生分解性プラスチックであるポリ乳酸は、一般的にトウモロコシなど穀物のでんぷんから作られる。ゴルフのピンや手術の縫合糸などとして市販されている。しかし、食料と競合するため、脱穀物≠ナポリ乳酸を生成することが課題。小林主査によると、海藻に含まれる多糖類に酵素と乳酸菌を加えて乳酸に変え、化学合成によりポリ乳酸に作り変える。チガイソ3キロから乳酸1`を生成することに成功、この乳酸1キロから800cのポリ乳酸ができるという。

 BCは微生物が作るセルロース。植物由来のため体に優しいが、新規物質で市販されてはいない。研究では褐藻類から生成できることを確認、緑藻類でも実験中。将来的には、創傷被覆剤や血管の接合剤などに活用が期待される。小林主査によると、海藻に酵素を加えて分解、それを微生物に食べさせる。微生物の体内で生成されたBCを、細胞を壊して取り出す。

 2年後の商品化研究を進めるが、コスト面の課題をクリアしなければならない。ポリ乳酸は海藻を使った場合、生成コストは1キロ当たり2000円程度。トウモロコシなどを原料としたポリ乳酸の販売価格は同数百円と、圧倒的に安い。

 小林主査は「脱穀物につながる技術で、食料と競合せずに医療を含む工業材料を作ることが可能。今後はコスト低減や、ポリ乳酸は高付加価値な医療用材料への応用を目指したい」と話している。

提供 - 函館新聞社


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