大正期の建物解体へ「北海洋裁学院」来月にも 市都市景観審が指定解除を決定
update 2011/8/24 10:28
函館市都市景観審議会(岩田州夫会長)が23日、函館市役所で開かれ、市の景観形成指定建築物等に指定されている「北海洋裁学院」(末広町18)について、同建物の指定を解除することを決めた。現在の所有者が老朽化によりこれ以上の建物の維持や補修が困難なためで、9月にも解体される見通し。西部地区の歴史的な建物がまた一つ姿を消し、街並み保全のあり方にも議論を呼びそうだ。
「北海洋裁学院」は1923(大正12)年、函館無尽本店(後の北洋相互銀行函館支店)として建設され、49年に前所有者が洋裁学校併用住宅として購入。鉄筋コンクリート造2階建てで、延べ床面積は723平方b。2005年から現在の所有者が個人住宅として活用している。
築87年が経過し、壁や天井のコンクリートのはがれや亀裂が目立ち、鉄筋も腐食や膨張して「居住空間として日常の使用に耐えないほどの支障が生じている」(市都市建設部)のが実態。市は所有者から解体の意向を受け、都市景観条例に基づく指定解除について23日の同審議会に諮問した。
市内の学識経験者らでつくる審議会の委員14人は同日、この建物の内部も含めて視察したうえで「指定解除はやむを得ない」と結論付けた。だが、委員からは「ここまで老朽化する前に何か手だてはなかったのか」「建築的にも重要で、外観の一部でも残せないか」「資金面など根本的な解決策を考えなければ」と慎重論も相次いだ。
この制度は1989年に始まり、現在49件が指定されている。指定建築物は補修費の8割、最大600万円が助成され、年間7万円の維持管理費補助制度もあるが、「老朽化した古い建物を維持するには賄えない額」(建築関係委員)という。荒井俊明都市建設部長は「制度も20年以上が経過し、見直し時期に来ている」とし、来年度に景観条例の改正案を提案する方針を示した。
所有者の男性(58)は「コンクリート造りは夏は暑く、冬は寒いため、灯油代だけで年間30万円以上かかる。耐震補強すれば億単位の費用もかさみ、個人の負担では限界に来ている。今後もここで暮らすには建て替えるしかなかった」と話し、9月にも解体し、新築住宅を建設する予定という。
ご注意:
●掲載している各種情報は、著作権者の権利を侵さないよう配慮の上掲載されるか、又は、各情報提供元の承諾の元に掲載されています。情報の閲覧及び利用については「免責事項」をよくお読み頂いた上で、承諾の上行って下さい。
●掲載中の情報の中には現在有効ではない情報が含まれる場合があります。内容についてはよくご確認下さい。