函館市 財政運営正念場【インサイド】

update 2011/8/23 11:05


 函館市の財政運営が正念場を迎えている。国から配分される本年度の地方交付税が見通しを大幅に下回ったことに加え、東日本大震災の影響で特別交付税も交付額減少が懸念されているためで、一般会計の実質収支は1987年度以来、24年ぶりに赤字となる可能性も出てきた。赤字穴埋めのための退職手当債を発行しないと表明している工藤寿樹市長は、就任から4カ月で早くも試練のときを迎えている。

 「頭が痛い」。工藤市長は17日の定例会見で苦渋の表情を浮かべた。「収支不足があるのに対策は1年遅れ。間に合う対策はすぐにはできない」と、いつもの快活な語り口は影をひそめる。

 市は本年度当初予算で普通交付税を348億7100万円と見込んだが、実際の交付額は7億8900万円少ない340億8200万円。交付税の不足分を起債で補える臨時財政対策債を加えても、歳入見通しは当初予算比で7億3000万円余り減る。人口減少とともに、東日本大震災の被災地復興に財源が回った影響とみられ「10年度からは約15億円減った」(市財政課)。また特別交付税も震災復興に充てられ、当初予算で組んだ14億円からは大幅に減ることが予想される。

 前市長が組んだ本年度の一般会計当初予算では34億円の財源不足が生じており、退職手当債22億円の発行と基金の取り崩しで補う計画だった。が、工藤市長は「退職手当債を発行しない」と表明。健全化を目指して高いハードルを課したが、交付税の減少分と退職手当債の分で、約30億円を補う必要に迫られている。

 加えて、市税収入も大幅な伸びは見込めない状況だけに、「(国に左右される)交付税頼みの状況を分かっていたはずでは」(ある幹部)と、庁内では疑問の声も徐々に上がり始めている。

 市の一般会計は過去、いずれもオイルショックの影響で1975年度と84〜87年度に赤字を計上。赤字の場合にはやり繰り上、翌年度の財源で穴埋めすることが可能だが、それを繰り返すことで財政は雪だるま式に悪化する。さらに赤字額によっては起債(=借金)が制限され、今後の建設事業などに支障が出る恐れもある。

 手元の財源としては基金が約18億円残っているほか、入札価格が予定額を下回る際などに生み出される執行差金が例年、6〜8億円存在する。しかし、来年度以降の予算編成を考慮すると、基金をすべて穴埋めで使い果たすのは困難な状況。執行差金もまた「年度末にならないと総額が見えてこない」(財政課)という。

 市は事業仕分けや人員削減、職員給与カットなどの行財政改革を急ぐ方針で、職員組合との交渉は早ければ9月下旬からの予定。ただ、これらの策で実際に効果が出るのは早くても来年1月以降。工藤市長は「今の状況では組んだ予算を2割残してと通知せざるを得ない」と述べ、予算を一定程度保留するよう求める考えだ。

提供 - 函館新聞社


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