放射線から解放 毎日が見えぬ恐怖「ほっとした」…ふくしまキッズ夏季林間学校参加者
update 2011/7/27 10:43
「放射線量の高い郡山に1時間もいたんです。お風呂に入るのは放射性物質を洗い流すためなのに」|。「ふくしまキッズ夏季林間学校」の参加者が到着した25日夜、入浴時間が取れないとの説明に、同行している保護者の佐藤唯さん(35)=福島県いわき市=が不安を口にした。入浴は、汗ではなく、体に付着した見えない恐怖を落とすため。心情を察した実行委側は、即座に隣接する温泉と調整を図り、入浴時間を設けた。
この日、入浴の予定がなかったのには実行委側にも事情があった。道南入りした最後の班が「ネイパル森」に到着したのは午後6時過ぎ。夕食の時間や全体説明の時間も必要だった。約200人の児童が荷物から風呂道具を取り出すだけでも時間がかかり、大きな混乱を避けるための選択だった。温泉の協力が得られたことも幸いし、冒頭のやりとりの後、1時間ほどで入浴が完了した。
実行委員長の進士徹さん(54)は「近くに温泉もあったので臨機応変に対応できた。これからも参加者の声を聞きながらつくりあげていきたい」とした。また、副委員長でNPO法人教育支援協会代表理事の吉田博彦さん(59)は「保護者の反応を想像できなかったことも事実。ただ、過剰な反応と切り捨てることはできない」と話す。少しでも長く被ばくの脅威から子どもを遠ざけたいとの願いから、事前説明会後に滞在期間を延長した保護者も多いという。
小学1、2年生と4歳の子ども3人を連れての参加している佐藤さんは、居住するいわき市より出発地の郡山市の放射線量が高いことが気がかりだったという。「いわきは県内でも放射線量が低いと言われているけれど、震災前とは比べものにならない。外出後に服を脱いでシャワーを浴びるのは毎日の習慣」と話し、実行委の迅速な対応に感謝した。
その郡山市から来た桑名成子さん(38)の3、4年生の子ども2人が通う小学校では、1学期の間に100人以上が転校した。桑名さんは「外出時はマスクに長袖、長ズボン。芝生に触ったり、外で遊んでいる姿なんて久しぶり」と喜ぶ。
開校式が行われた26日、大沼ふるさとの森自然学校では、子どもたちが今まで外で遊べなかったエネルギーを爆発させるかのように、汗だくになりながら、ボールを追い掛けた。吉田さんは「福島では大人に『放射能』という子どもには理解のできない規制をかけられ、ストレスがたまっていた。昨日は長旅で疲れているなと感じていたが、不安から解放され、今日の子どもらしい姿にほっとした」と話した。
佐藤さん、桑名さんはともに七飯町に来たことで、自分自身も安心できたと話す。この4カ月半、日々の放射線量や、食べ物の安全性などの情報に気を使いながら暮らしてきた。両家族とも、夏休み後には福島県を離れるという。札幌市へ移住する佐藤さんは「3人育てるのはいわきでも北海道でも一緒。でもいつかはいわきに帰りたい」と笑った。
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