稚ナマコ育成にアゴハゼ有効
update 2011/6/10 10:11
桧山北部地区水産技術普及指導所(せたな町)と同町大成水産種苗センターは、中国需要の拡大に伴い全道的に注目が集まるナマコの人工種苗生産について、アゴハゼ(通称・ゴダッペ)を利用すると体長1ミリ以上の稚ナマコへの食害がなく、大量へい死の主因となるコペポーダ(ほふく性小型甲殻類)の駆除能力も高いとする試験結果をまとめた。アゴハゼがコペ対策に有効であることを確認、今後、さらに実証試験で効果が確認できれば漁業者や漁協に報告する。
中華料理の高級食材で、経済成長著しい中国では需要が増大するナマコ。道南でも種苗生産が盛んで、同センターでは採卵や幼生管理技術は確立されているが、初期育成段階(稚ナマコ)での大量へい死について有効な対策がなく、深刻な課題となっていた。そこで、青森県でコペ対策としてアゴハゼを利用している点に着目、その効果を検証した。
両者は2010年度、10リットルのプラスチック水槽を使い飼育試験を行い、アゴハゼのサイズの違いによる稚ナマコへの食害やコペの駆除能力を調べた。アゴハゼは同町の海岸で捕獲した。
検証試験では、6つの試験区を設け、各水槽には体長1ミリの稚ナマコを10個体付着させた。@は体長7センチのアゴハゼ1匹、Aは3センチのアゴハゼ1匹をそれぞれ投入、コペはどちらも入れなかった。Bは7センチアゴハゼ1匹、Cは3センチアゴハゼ1匹をそれぞれ入れ、どちらもコペ2100個体を入れた。Dはアゴハゼは入れず、コペ2100個体のみ。Eはアゴハゼ、コペともに入れなかった。
結果によると、@とAは稚ナマコが100%生きていてアゴハゼが稚ナマコを捕食しないことを確めた。Bはコペを84%駆除、稚ナマコの生残率は72%。Cはコペを98%駆除、稚ナマコの生残率は100%だった。Dはコペが2倍に増え、稚ナマコは4割死んだことから、コペによる稚ナマコの食害を確認した。Eは稚ナマコが9割生きていた。駆除能力は大型魚(7センチ)よりも小型魚(3センチ)の方が高いことが分かった。
同指導所の森伸行専門普及指導員は「アゴハゼを入れると、稚ナマコの生長が良く、大量へい死も起こらなかった。アゴハゼ以外のコペ対策として行っている水槽替えやコペ駆除用メッシュの洗浄などの作業負担も解消される。今後はアゴハゼを入れる時期を検証したい」と話している。
桧山北部ではナマコを主にタモで漁獲しており、09年の漁獲量は42トン、生産額は1億6621万円。中国の富裕層を中心として需要が高まり、人気がある道産ナマコの価格が高騰。漁業関係者からナマコ増殖への要望が高まっている。道南ではせたなのほか、八雲町熊石、上ノ国、奥尻などの各町で種苗生産に取り組んでいる。
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