国の支援拡充で赤字圧縮…江差線 五稜郭―木古内間 3セク鉄道運行
update 2011/5/11 10:17
北海道新幹線開業に伴い、JR北海道から経営分離される江差線の五稜郭―木古内間(37・8キロ)の事業形態を検討する、道南地域並行在来線対策協議会が10日、渡島総合振興局で開かれた。事務局の道は、国が昨年末に貨物調整金制度の拡充を決めたことを踏まえ、全区間を第3セクター鉄道で運行した場合、赤字額が単年度で1億7000〜1億5000万円、30年間の累積額が当初の105億円から69億5000万円へと、大幅に圧縮されるとの見通しを示した。道は今秋をめどに、方策を絞り込んだ案を示す考えで、本年度末の方向性決定を目指す。
協議会には道の高井修副知事、寺山朗渡島総合振興局長、函館市の工藤寿樹市長、北斗市の高谷寿峰市長と木古内町の大森伊佐緒町長が出席した。
五稜郭―木古内間の扱いをめぐっては、上磯駅を境として利用状況が異なるとし、同協議会は昨年、選択肢を@全区間3セク鉄道で運行A五稜郭―上磯間は3セク会社が運行し、上磯―木古内間は減便して減った分をバス会社が運行BAと同じ形態で、減便分を3セク会社が運行C五稜郭―上磯間は鉄道とし、上磯−木古内間はバス転換D全区間バス転換―の5案に絞った。
昨年の段階では全区間鉄道運行とした場合、30年間の累積赤字額を105億3000万円と試算したが、国の制度が拡充され、かつ30年間継続すると仮定して同69億5000万円と算出。鉄道・バスの併用方式では、新規のバス車両購入などを考慮し、同76〜73億円とみている。全区間バス転換時の同15億9000万円は昨年と変わらない。
道は、今後のスケジュールについて国の動向や先行地域の取り組みを見ながら選択肢をさらに絞り込み、今秋をめどに事務局案を示すとした。
協議会では、鉄路維持の姿勢を示す高谷市長が「大きな前進」と評価した上で、「単年度で1億5000万円の赤字なら、十分負担に耐えられる」と述べた。また貨物調整金について「予算は通ったが、法案成立のめどは立っていない。協議会の決定を延ばしても大丈夫か検討してほしい」と求めた。
大森町長も「住民との協議が必要で、早い時期にスタンスを示してほしい」と要望したが、高井副知事は「できるだけ経費のかからない方法を選ぶべきではないか。赤字が出るものへの行政負担は相当の道民の理解が必要」と述べるにとどまった。
また、工藤市長は地域の交通体系全般を考えた中で江差線のあり方を考えるべきとした上で「北斗の姿勢が重要。一定の制約はあるが協力したい」と述べたほか、「人口や利用客の減少を考えると、赤字か黒字かだけでは整理できない」と話した。
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貨物調整金 JR貨物が並行在来線の運営会社に支払う線路使用料に上乗せする金額のこと。並行在来線や貨物鉄道の維持・存続を図るため、国が昨年末に制度の拡充を決定。鉄道・運輸機構の利益余剰金を活用し、国が本年度から10年間で総額1000億円を負担するが、詳細の内容はまだ決定していない。
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