震災1カ月、日常生活もう少し時間
update 2011/4/12 11:58
東日本大震災発生により、混乱していた函館市内の物流は落ち着きを取り戻したが、国産たばこの出荷停止など、日常生活の混乱は続いている。主要産業の観光も同様。震災から1カ月経った街の様子を探った。
■たばこ
函館市内のコンビニエンスストアでは国産たばこの品切れや品薄状態が続いている。
震災で日本たばこ産業(JT)の製造工場6工場のうち2工場が被災し、3月30日から全97銘柄の出荷を停止。11日に「マイルドセブン」など一部の銘柄に限り、数量限定で出荷を再開したが、需要に対応できる量ではないため、店によっては販売制限を設けたり、十分な品数になるまで店頭に並べないなどして対応に苦慮している。
国産たばこの出荷停止は外国産のたばこの販売にも影響が及び、国産の欠品分を補うため通常より多く入荷する店が相次ぎ、銘柄によっては品薄になるケースも出ている。
たばこを主力商品としている小売店、セラーズいそ(宮前町33)では、常連客のほか、飛び込みの客も来店。好みの銘柄がないため、やむを得ず別の銘柄に切り替え買う人が増えているという。11日には、数量限定で一部国産たばこが納品されたが、磯雅晴店長(60)は「このまま売っても常連客に行き渡らない可能性もあり、客離れを懸念している。何とか元の状態に戻ってほしい」と願っている。
■観光
震災後、3月末までに、1施設当たり最大で数千人単位のキャンセルが相次いだ市内の旅館・ホテル業。一部に回復の動きもみられるが、現在も例年の5割程度に宿泊が落ち込んだままの施設が多い。
函館湯の川温泉旅館協同組合(22軒)の金道太朗理事長は、ゴールデンウイークについても「例年は期間中満室だが、今年は後半の空室が目立つ」とする。少しでも客を取り戻したいとの思いから、組合員が連携して5000円〜1万円の定額プランを売り込む計画だ。金道理事長は「東北新幹線が運行再開しなければ希望は見えない。福島原発の状況も落ち着いてくれれば…」と祈る。
原発事故の影響で海外からの渡航需要も減り、定期便やチャーター便も断たれている。大韓航空が函館―ソウル(仁川)間で週3日運行する定期便は、5月の大型連休需要で一時的に再開する見通しだが、その後は未定。同社函館支店は「再開は協議中だが、原発の状況次第」とする。
市や商工会議所で構成する「函館空港定期航空路線活性化事業実行委員会」が、6月の大韓航空定期便就航5周年に合わせ100人規模の記念ツアーを企画しており、契機となるよう願っている。
■物流・消費
大震災による物流停滞や消費者の不安心理にかられた「買いだめ」などが原因で、函館市内の量販店やスーパーでは特定の商品に品薄の状態が続いたが、現在は、落ち着きを取り戻しつつある。一方、被災地への物資供給が優先され、資材など新たな品不足や欠品が懸念されている。
函館では懐中電灯やラジオをはじめとする防災グッズの需要は依然高いが、被災地の物流が優先され、市内に入る量は限られている。家電量販店の「スーパーアウトレットベスト函館店」(昭和1)の阿部真也店長は「希望に応じて提供したいが、制限があるので…」と頭を抱える。
また、被災地では仮説住宅の建設が進められ、資材類や日用品の需要が高まることが予想され、イエローグローブ本部(函館市西桔梗)では「従来通りの入荷ができるのか見通しが立たない」と流通状況を注視する。
はこだて自由市場(新川町)は、プロの料理人の多くが仕入れで足を運ぶ。しかし、“自粛ムード”で市民の外出が激減し、店側は仕入れ数を減らすため、商品は売れない。前直幸理事長は「東北を応援したいが、こちらの状況も相当深刻。かといってイベントを行う雰囲気でもない。市民の皆さんに利用してほしい」と切実に語った。
■JR
函館駅がホームの冠水で使用できなくなるなど、甚大な被害が出たJRでは、11日現在、道内を運行する列車に関しては通常ダイヤに戻っている。しかし、東北地方の線路状況により、札幌と上野を結ぶ寝台特急を中心に、運転を見合わせている列車もあり、全面復旧には至っていない。
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