津波避難わずか…危機管理に課題

update 2011/3/19 11:22


 東日本大震災の発生で、津波による浸水や冠水など大きな被害を受けた函館市。市場や商業施設の再開など復旧に向けて動き出す一方、避難対象エリアの避難率は6・2%にとどまり、市民の防災意識に課題も残した。未曽有の災害を今後にどう生かすのか。今回の対応から命にかかわる避難の実態を探った。

 函館市は津波警報が発令された11日午後3時14分、市内31町の8315世帯、1万5633人を対象に避難勧告を出した。同3時半に大津波警報に切り替わり、同3時40分には勧告より度合いの強い避難指示を初めて発令。対象は市内75町の1万4830世帯、3万713人に上った。

 避難所は市内の小中学校や公共施設、ホテルなど市内約30カ所に開設。同7時半のピーク時には全体で1910人が駆け付けたが、避難率は6・2%にとどまる。あくまで避難所に逃げた人が対象で、自主避難した住民は含まれていないが、「時間帯が勤め中の人も多く、すべてには行き届かなかった」(市総務部)。

 避難指示は翌日の12日午後8時20分に警報から注意報に引き下げられるまで継続されたが、11日午後8時すぎから、避難所から帰宅する人が増加。同11時の避難者は1369人と、ピーク時に比べ約540人が帰ったことになるが、市内の最大波はその後の同11時35分に2・4メートルを観測している。

 市は津波被害を想定したハザードマップ(災害予測図)に従い、市の広報車や消防、警察車両を使って避難指示を出したが、避難対象地区の住民からは「広報車のスピードが速くて呼びかけが聞こえなかった」(弁天町、60代女性)、「どのタイミングで、どこに避難すればいいのか分からない」(大町、70代男性)との声も聞かれた。 避難率の低さは昨年2月のチリ沖地震の際、予報より実際の波が大幅に低かった前例も背景にある。被害を受けた函館朝市の海産物店主(49)は「津波の経験がなく、甘く見ていた」と打ち明ける。市総務部も「第1波が最も高いとも限らず、余波の危険を説明してもなかなか理解してもらえない」と話す。

 また、避難「勧告」「指示」とも強制力がなく、その違いもあいまいだ。避難対象エリアの市内若松町では自宅にいた60代の男性が浸水被害で亡くなる事態も発生した。同部は「津波が収まったとか、避難しなくても大丈夫とか、個人の思い込みによる過小判断は避けてほしい」と呼びかけるが、危機意識の共有には難しさもある。

 市は津波発生時の避難場所や予想浸水区域を記した「津波ハザードマップ」を1万部増刷することを決めたが、マップで示す前提条件は道が想定した「3メートル程度の津波」だ。気象庁が発表した市内で予想される津波の高さが一時4メートル、最大で6メートルにも達した。

 結果的に市内の浸水はマップで示す範囲にとどまったが、予報通りの津波が押し寄せた場合、被害がさらに拡大することは必至だ。市は国や道レベルの抜本的な見直しを受けて対策を練り直す形だが、市が定める地域防災計画は2007年の一部改定から4年が経過していて、独自の対応も急がれる。

提供 - 函館新聞社


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