万感 最後の航海へ…実習船「若竹丸」の吉野船長、古川三等航海士
update 2011/2/8 10:50
教育庁の実習船「若竹丸」(666トン)が8日、函館港から本州南東岸海域へ、本年度最後の漁業実習に向かう。今年3月末で定年退職を迎える船長の吉野威(たけし)さん(60)と三等航海士、古川敏広さん(60)にとっても、最後の航海。40年近く、水産高校の実習生を指導してきた思いを振り返り、「教え子は家族も同然。この漁業実習も安全に努めて、未来の海で活躍する若者の育成に全力を注いできたい」と2人は語る。
吉野さんは岩見沢出身で、1976年から実習船に携わり、「海のないまちで育ち、船への憧れがあった。実習船で多くの生徒と出会い、時には親として、時には兄弟のように心を通わしてきたことが財産になっている」と語る。
古川さんは小樽の生まれで、68年から小樽水産高校所属船の指導にあたり、「幼少から漁業を身近に感じ、船乗りになるのは自然な流れだった。生徒と年齢が近いころから実習船に乗っていたので、思い出話は尽きない」という。
長年にわたり、一年の大半を実習船で過ごしてきた。大海原は常に危険と隣り合わせだ。漁網が引きちぎられるような大しけを幾度となく乗り越えてきたことも。
吉野さんは「遠洋に出るとなると大人でも怖気づく。その中で、実習生は不安に打ち勝ち、共同生活の中から一生の糧を得ることができる」。古川さんも「自分が不安なそぶりを見せたら、生徒に示しがつかない。いつでも手本として、何事にも真剣に取り組んできた」という。
若竹丸は、中部北太平洋とベーリング海の日付変更線付近で、サケ・マス流し網の資源調査実習も行っている。その実績は、国内外で高く評価され、各国の研究者らが「ワカタケライン」と称賛を込めて呼び、2008年には「北太平洋遡河性魚類委員会」(NPAFC)から感謝状が届いた。
2人は「若竹丸は、日本の漁業実習船をリードしてきた存在」と声をそろえ、「これから実習する生徒やそれを支える関係者には、この伝統を守り、一層の漁業発展に貢献できるよう頑張ってもらいたい」と願う。
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