声楽家・徳永ふさ子さんら4人が縄文時代の「楽器」で活動

update 2011/1/12 19:06


 函館市内在住の声楽家・徳永ふさ子さんら市民有志4人が、縄文時代に使われていたとされる「土笛」の複製を用い、音に対する先人の価値観を考えてもらう活動に取り組んでいる。音楽という概念のない悠久の大地に響いた音。徳永さんは「自然への祈りや感謝という精神性に満ちていたのでは。どうしたら幸せに生きられるか、今の私たちに学ぶものは多いはず」と力を込める。

 以前から「音楽とは何のためにするのか」を自問してきた徳永さん。昨年8月から、縄文期の文化や知恵を現代に生かすフォーラムや講演を市内で開催。南茅部地区の垣ノ島遺跡から発掘された土笛をモデルにした複製品や、縄文土器の複製に革を張った「縄文太鼓」などを使い、試演もしている。

 具体的には、動物の鳴き声や風といった自然の音を仮想で再現したり、歌を加えたりするなどし、縄文人の心をイメージしてもらうというもの。徳永さんは「当時どんな音が響いていたかは分からないが」と前置きした上で、「生物などすべてのものに魂が宿る考え方『アニミズム』は仮想体感できると思う。私たちの根源的な何かに触れ、心揺さぶるものがある」と指摘する。

 また、小樽市の忍路(おしょろ)環状列石から出土された木片をベースに、活動の趣旨に賛同する函館の調律師・小川進さんが「縄文琴」を制作。こうしたものが存在したかどうかは不明だが、「当時の音を探る手掛かりの一つになる」(徳永さん)という。

 「大勢の市民や子どもたちが目を輝かせ、当時響いたであろう音、意味を真剣に考えてくれた」と活動を振り返る徳永さん。「世界中で紛争が絶えない現代にあって、『心豊かに生きる』ことは人間が大切にしなければならないもの。日常的に自然の恵みに感謝していた縄文人の精神に思いをはせ、人間の健全育成につながるよう活動を続けたい」と語る。

提供 - 函館新聞社


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