マッチ箱が映すマチのにぎわい/高橋さん、母の形見保管

update 2011/1/2 12:08


 函館市千代台町の高橋順一さん(84)は、昭和の初めに市内の飲食店などで配られていたマッチ箱を大切に保管している。十字街や大門、湯の川温泉のにぎわいを伝える貴重なもので、目を引く図柄に、古里をはぐくんできた先人の情熱が重なる。高橋さんは「今に生きる我々を応援してくれているようだ。マッチの淡い炎が照らしてきた時代の流れに思いを寄せ、この明かりを励みに新たな365日の訪れを祝いたい」と語り、希望に満ちた新年を祈る。

 このマッチ箱は1926(昭和元)年―55(同30)年代に、高橋さんの母貞子さん(享年94)が集めたもので、大事な形見だ。当時、マッチは生活を支える必需品で「マッチは庶民文化の代表格。ハイカラな土地柄が芸術的なマッチラベルを多く生み出したと思う」と高橋さん。

 マッチのラベルからは、本州との海の航路やはしけがあった西部地区から函館駅前、大門地区へと繁栄していった様子を垣間見ることができる。

 函館銀座通りの社交場「ムサシノ」のは和服美女の挿絵、映画館松竹座(宝来町)、現在の函館市地域交流まちづくりセンターである「丸井今井」(末広町)、同じく十字街にあった棒二森屋の前身「森屋」、老舗「函館五島軒」、函館駅前の精養軒は「高級食堂デパート 階上カフヱー」、そして湯の川温泉街の旅館も。

 36年の陸軍特別大演習に天皇陛下が来道したことを祝福するのは、函館日日新聞社のマッチ。函館駅前にあった喫茶店「華壇」の図柄は、日の丸に「皇軍萬歳」と軍国主義の影響が色濃い。

 現代ではマッチを使う機会が減り、その希少さも薄れてしまった。高橋さんは「すぐ火がつくうれしさ、マッチ独特の温かさ、あのにおいが良くてね」と語る一方、「マッチなどの火種は生活に根付き、幾度となく函館のまちを大火にしてきた。しかし、その都度、がれきのまちを再建しようと懸命に力を注いだ市民がいた。敬意と感謝を示して見習いたい。時代の荒波に動じない、希望に満ちた伝統のともしびが函館にはある」ときっぱりと語る。

提供 - 函館新聞社


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