「日本海グリーンベルト構想」5年目、紙コップから手製ポットへ

update 2010/10/31 20:36


【上ノ国】2006年に始動した上ノ国町の「日本海グリーンベルト構想」が5年目を迎えた。当初は紙コップを使った手製のポットを使い、カシワの種子(ドングリ)を手植えしてきたが、今年からは世界的な生態学者として知られる、横浜国立大の宮脇昭名誉教授が新開発した育苗ポットによる苗木作りがスタート。江戸時代からの乱伐で荒廃した日本海沿岸の森林を復活させる取り組みは、住民の熱意に後押しされて進化を続けている。

 町内で試験的にドングリの種まきが始まったのは2006年秋のこと。当時は桧山南部4町の合併協議が崩壊した直後。財政難にあえいでいた町には、本格的な植林事業に投じる予算はなかった。町民の協力で集めたドングリ3000個を汐吹地区の荒れ地に植え付けたが、確認された新芽はわずか6本だった。

 07年1月には、同構想に賛同する漁業者を中心に「上ノ国町日本海グリーンベルト構想推進協議会」が発足。磯焼けが進む日本海の環境を取り戻すため、江戸時代からの乱伐で荒れ果てた桧山沿岸の森林を復活させようと、2026年までの20年計画でドングリの種まきや植樹に取り組むことを決めた。

 前年の苦い教訓から、紙コップに穴を空けたポットを手作りした。ドングリを乾燥やネズミの食害から守ることにしたが、現地での発芽率は伸び悩んだ。09年からは町内で集めたドングリから丈夫な苗を育てて植樹する方法もスタート。町外の賛同者からは自分で育てた苗木が届けられるケースも増えてきた。

 同構想は、立ち上げ当初から宮脇さんの植樹活動を手本にしてきた。宮脇さんの来町が実現したのは今年1月。講演会で宮脇さんは「豊かな海づくりにつながる素晴らしい取り組みだ」と評価。会場を埋めた住民に支援を約束した。

 世界1700カ所で5000万本もの植樹を行った宮脇さんは今月21日、新たに開発した育苗ポットを携えて同町を訪問。自身の活動を振り返りながら「今まではベターな取り組みだった。新しいポットではベストな植樹になる。皆さんは本物の森づくりを世界に発信する舞台監督であり、命をつなぐ森づくりの主役にもなる」と語り、世界で初めて披露した新型ポットへの期待を熱く語った。

 工藤昇町長は「試行錯誤の連続だった。宮脇先生の技術を生かして、丈夫な苗を育てていきたい」と意気込みを見せた。紙コップから新型ポットへ―。町民の願いが込められたドングリは芽吹きの時を待っている。

提供 - 函館新聞社


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