地域の未来へ“船出”…戸井の主婦らが大漁旗で法被作る

update 2010/3/8 11:35

 函館市戸井地区で漁業に携わる主婦らが、30年以上前に新造船祝いで住民から地元漁師へ贈られた「大漁旗」で法被を作っている。上々の仕上がりが評判を呼び、函館市内の2保育園の卒園式でヨサコイソーランの衣装に活用されることが決まった。「まちの繁栄を象徴する存在で、先人が汗水流して浜を盛り立ててきた思いがにじむ。後世にこの情熱をつなげられれば」と関係者は歓迎。生まれ変わった大漁旗は、将来を担う子どもたちと地域の明るい未来を見守るように、新たな“船出”をする。

 縁起物の大漁旗は、横1.55メートル、縦1b。船舶の海上パレードでは、ずらりと飾られ潮風にはためく。「漁師冥利(みょうり)に尽きる。みんなを幸せにしてくれるようで」と華やかだ。 ただ漁業関係者を取り巻く環境は年々、厳しさを増している。高齢化、後継者不足、魚価の低迷…。ゆえに新造船の数は減り、海で大漁旗を眺める機会も減った。戸井では小学校の運動会や神社の祭典に登場し、面目を保っているものの、少子化による学校統廃合などの影響も。

 この課題に、浜の母さんたちが立ち上がった。昨秋、市戸井支所(伊藤修支所長)と戸井教育事務所(八木多佳夫所長)の呼び掛けで法被づくり作業を展開。11月下旬から釜谷町会女性部(館山澄子部長)のメンバーや旧市内からボランティア6人が駆けつけた。多い日は、約40人が集った。

 戸井で「縫い物の先生」と慕われる川村正子さん(60)が、図案や裁縫技術を指導。1着に大漁旗2枚の割合で、独特の色合いを鮮やかに組み合わせ、漁家の屋号や船の名前を背部にあしらうよう、工夫した。2月までに計38着を制作。市の広報誌で「イベント等に無料で貸し出します」とその様子を紹介した。

 反響は大きく、問い合わせが相次いだ。「ぜひ卒園式の舞台でヨサコイソーランの衣装として使わせていただきたい」と3月18日に函館市内の深堀保育園(高橋悦子園長)で、28日には青い鳥保育園(氷室美紀園長)の卒園式で園児の門出に花を添える。

 川村さんは「手分け作業の裁縫が楽しくて、いい時間だった。今度は子ども用の法被を作ってみたい」、館山さん(71)は「大漁旗には人情そのものがあると思う。いまこうして活用され出したことはとても意義深い。素直にうれしい」と目を細める。

 戸井教育事務所では、今後も特製法被の無料貸し出しを行う。「水洗いとアイロンをかけてくれさえすれば」と積極的な利用を呼びかけている。同時に、地域に残る大漁旗の提供も求めている。問い合わせは同事務所TEL0138-82-3150。

 この活動は、市戸井支所の本年度地域コミュニティー推進事業として実施した。

提供 - 函館新聞社




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