道教大の佐々木教授、「日蓮と一遍」出版

update 2010/2/25 16:27

 道教育大函館校の佐々木馨教授(63)=日本中世宗教史=が、15冊目の単著となる「日蓮と一遍―予言と遊行の鎌倉新仏教者」を山川出版社から出版した。13世紀後半の蒙古襲来という未曾有の国難に、仏教者の日蓮と一遍がどう対応し、生きたかを解説。日清、日露、太平洋戦争へと突き進んだ20世紀と、蒙古を破った「神風」「神国思想」の関係を詳述している。

 「人を通して時代をよむ」をキーワードに同出版社が高校生以上の一般向けに全100巻を企画。昨秋の「卑弥呼と台与」「坂本龍馬」などに続き3回目の配本。

 日蓮(1222―82年)については、鎌倉幕府に上呈した「立正安国論」の中で日本が外国から侵略されることを予言。しかし、日蓮は幕府の反体制者として佐渡に流罪となり、予言通り蒙古が襲来する。日蓮は、自身がよって立つ「法華経」を幕府が軽視したための惨事であるとした。

 ただ、日蓮は国家や他の仏教各宗を批判しても、平和主義者であったと佐々木教授は語る。「蒙古襲来という時代に生き、法華経の行者としての信仰と実践の中に心の平和を主張した」。

 一遍(1239―89年)は体制でも反体制でもない「超体制仏教者」で、伊予国(愛媛県)の武士出身であることから、蒙古襲来の情報は知りえる立場にあったとみる。しかし、一遍は蒙古襲来前に九州を訪れても、襲来後は決して訪れていないことに注目。「平和主義者で戦争嫌いの一遍は、戦争の悲しさを忘れるために遊行僧(ゆぎょうそう)として狂うように踊り念仏をしたのではないか」とみる。

 佐々木教授は「日蓮、一遍とも戦を回避して安穏の世界を望んだ。21世紀の戦争と平和を考える一助になれば」と話している。

 A5変形判、94ページ、840円。問い合わせは最寄りの書店へ。

提供 - 函館新聞社




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