変わらない味 親しまれ75年 宝来屋ベーカーリー28日閉店
update 2010/2/23 12:38
函館市本町28の「宝来屋ベーカリー」(高久守社長)が28日、店主の守さんの高齢などを理由に、75年の歴史に幕を下ろす。1935年に大町に出店し、53年に現在の場所に移転。今も変わらない懐かしい味と、丁寧な接客にファンも多い。「閉店するのは残念」との声が高まる中、守さんは「店を閉めるまではパンを作り続ける」と今日も汗を流す。
同店は1935年、守さんの妻洋子さんの父、故 春治さんが、末広町の「宝来パン」からのれん分けし、大町で「宝来パン分店」として出発。その後、戦争期の移転を経て、現在の場所に落ち着いた。63年に洋子さんは、春治さんのもとで働いていた守さんと結婚。二人三脚で店を切り盛りし、地元で『宝来パン』と親しみを込めて呼ばれるようになった。
移転当時の電車通りは、舗装されておらず、「朝市へ向かう馬車をよく見た」と洋子さん。近所には幼稚園があり、お昼どきにはパンを買いに来る園児もいたという。「当時のパンは高級なおやつ。みんな目をきらきらさせながら買いに来た」と洋子さんは目を細めて懐かしむ。
パン屋の朝は早い。守さんは毎日、午前1時すぎに起床。強力粉、イースト菌などを機械に入れ生地を作る。「昔の人間だから昔風のパンしか作れないよ」と笑ういながら、「ゆっくり、おだやかに、心を込めて」パン作りに励む。
食パンやあんパンなど定番の種類が人気。素朴な味わいがあり、無添加にこだわっている。そんな真しな姿勢が共感を呼ぶのか、遠くは松前や苫小牧などからも注文があるという。函館市内在住の常連の女性は「食パンが大好き。青森の知人からも送ってほしいと頼まれる」と話していた。
守さんは「パンは生き物。神経を使うし、気も抜けない。でもそこが面白い。パン職人としてまっとうできて良かった」と充実感をにじませる。「街のパン屋さん」として市民に親しまれてきたことに、2人は「とても幸せでした」と笑顔でうなずいた。
提供 - 函館新聞社
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